“スプリンクラー水浸し事故” 楽団×裾野市 解決の道なぜ遠く?…楽団は「深い傷」【現場から、】

静岡県裾野市のホールで2022年9月に発生したスプリンクラー事故。突然、作動したスプリンクラーで舞台の上にあった100個以上の楽器が水浸しになりました。事故から半年以上経過し、なぜ起こったのか、原因を裾野市と楽団がそれぞれ独自に調べる特異な経過をたどっています。

<金原一隆記者>

「ここがスプリンクラーが作動して舞台の上に水が大量に降ってきたという(裾野市民文化センターの)大ホールです」

照明が当たっていない暗がりの天井を見ると、規則的に並ぶ小さな白い点。スプリンクラーの「吹き出し口」が並んでいます。

事故が起きたのは2022年9月24日のことです。大ホール天井のスプリンクラーが突然作動しました。1時間後のコンサートのため準備をしていた「シンフォニエッタ静岡」の楽器100点以上などが水浸しになる被害を受け、5人が滑るなどしてケガをしました。

事故から半年が経ちました。

<金原記者>

「大量に水があふれたような臭いがすることはありません。施設も片づけられて当時の痕跡が残っているところはないようです」

設備の点検はすでに終わっていますが、現在も使われていない大ホール。半年が経っても楽団のメンバーにとって事件は続いています。

<シンフォニエッタ静岡指揮者 中原朋哉さん>

「これぐらい水たまってたと思います。靴のかかとの部分があったとして1回でくるぶしまで来たんで。その時がもうその時の傘に当たる水の音がトラウマになってて。シャワーのザーって音聞くだけで怖いですもんね。だから土砂降りはまだ駄目です。怖い…。楽器とみんなの体、ケガした人の体と、みんなのその心の状態を、事故の前に戻さない限り、裾野市長は許さないって言いましたけど元に戻してって。9月24日の12時55分までに戻してくれればいいです」

楽団側は、裾野市に補償や謝罪を求めていますが、市として、現状では謝罪に応じられないとの立場です。

<裾野市 村田悠市長>

「今回のこの件に関しましては、第三者の犯行もまだ捨てきれないことから、私は謝罪はまだしかねると思っておりまして」

裾野市は、施設に故障がなかったかを検証する事故調査委員会を設置して原因究明を進めています。

<井手春希キャスター>

Q楽団の中原さん、(裾野市に対して)かなり怒っています。その理由は?

<金原記者>

なぜスプリンクラー作動したのか、その原因を巡ってなんです。裾野市は、施設に故障がなかったか検証する事故調査委員会を立ち上げました。その一方で、スプリンクラーは何者かが故意に作動させた疑いもあるとして警察に相談していて、事故原因や、責任の所在など結論は出ていません。

<井手キャスター>

Q市の謝罪がないことが反発を生んでいるのですか?

<金原記者>

それに加えて、楽団側によると、裾野市側は事故を目の当たりにした楽団員に聞き取りをしていないそうです。また、市側の事故調査委員会の設置することについても連絡や説明がないまま、話だけが進んでいると反発していて、楽団は独自に専門家を集めて事故原因を調べる検討委員会をつくるに至りました。

<井手キャスター>

Q市側と楽団側それぞれの委員会の調査に違いはあるんですか?

<金原記者>

実は双方とも似ています。スプリンクラーを作動させるための「配管」の「漏水」にどちらも言及しています。違いは、楽団側は配管の漏水が原因だと結論付けました。一方、裾野市側は結論には至らず6月まで調査を継続するとしました。

事故から半年が経過してまだ解決に至っていない状況に、楽団側は、苦しい胸の内を明かします。

<シンフォニエッタ静岡指揮者 中原朋哉さん(傷んだ楽器について)>

「楽器の状態から言えば個人の楽器はいま修理中と言うか、修理しながら使ってる。その後もまた具合が悪くなってきたっていうの修理しながらいま半年。みんな同じぐらい濡れた楽器を修理しながら使ってる。半年経ってもどんどん不具合は広がってくる。」

結論が出ない日々を重ねるうち、水をかぶった楽器は、元々の音色からどんどん変わってしまっています。

<中原さん(楽団員の心の傷について)>

「会って話を聞くと、舞台に入る瞬間に『きょうは水降らないよね』って思ってるんですって。舞台の上で自分の席に座って楽器ケースを開ける時に『大丈夫かな』『きょうは大丈夫』、まずこの濡れた楽器が大丈夫かなってことと、ケース開けた瞬間に事故を思い出すんです。でもその心の傷は解消できない。みんなそれを抱えてるってとこがすごく…何ともしてあげられないのでつらいところですね」

<金原記者>

楽団が水をかぶった楽器を修理し、元の音色を取り戻すにはまだまだ時間がかかりそうです。

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