大分トリニータ 労を惜しまぬハードワーカー茂平 【大分県】

J1昇格を目指す大分トリニータにとって、連敗は許されなかった。6節の大宮戦で今季初黒星、7節の対戦相手はJ1から降格した磐田であったこと、連敗が自信を失わせること、逆に白星でチームが再び勢いを取り戻すこと…。すべて苦しみ抜いた昨季に痛感している。顔をのぞかせつつあった暗雲を振り払うためには、勝ち点3が必要だった。

そのような中で迎えた磐田戦。序盤戦とはいえ上位争いに踏み止まるか大事な一戦で、輝いたのが茂平だった。前半39分、FKの流れから野村直輝のクロスを伊佐耕平が頭で折り返したボールに茂が反応した。「胸トラップで相手のマークを外すまでは良かったが、少し浮いたので蹴り込んだ」。体が勝手に動いたというバイシクルシュートで貴重な先制点を生み出し、チームに勢いを与えた。

茂は大分トリニータU-18から立命館大を経て、2016年にJFLの奈良クラブに入った。J3の北九州、秋田でJ2昇格を経験するなど、各所属チームで実績を積み、ステップアップした。順風満帆のサッカー人生ではなかったが、「試合に出ることで成長できた。高校を卒業してプロにはなれなかったが遠回りではなかった」と振り返る。

味方のために体を張り、戦う茂平

第二の故郷、大分を離れてから12年。「ようやく戻ることができた。選手として一番いいタイミングで「大分復帰」のオファーをもらった。迷うことはなかった。ようやく大分に恩返しができると思った」と今季から加入。開幕戦から先発メンバーに名を連ね、夢の舞台というレゾナックドームで派手な一撃が「大分初ゴール」となった。「得点でき、サポーターに喜んでもらえた。この先も勝利に貢献できる得点を決めたい」と、今後に思いをはせている。

労を惜しまぬハードワークで右サイドを上下動する。その運動量は1試合の走行距離が14kmを超えることもある。下平監督は「ひと言で言えばタフ。守備でも攻撃でもチームのために戦える選手」と評す。茂は「周りの選手が僕の力を引き出してくれている。試合に出られるのも、そのおかげ。連係やつなぎの部分で味方を助ける位置取りや運動量を増やしたい」と、これからも仲間のために走り続ける覚悟だ。好調のチームに汗かき役の存在がいることを、見逃してはいけない。

チームに欠かせない存在となった

(柚野真也)

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