「無駄なレースになってしまう」福住がクラッシュにいらだち。アレジは「ミスジャッジだった」と謝罪

 4月8日、静岡県の富士スピードウェイで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権第1戦の決勝レース。スタートから4台がストールするなど荒れた展開となった今季開幕戦だが、レース終盤の36周目、9番手を争っていた福住仁嶺(ThreeBond Racing)とジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)がTGRコーナーで接触。2台はクラッシュし、レースはそのままセーフティカーで終えることになった。

 今季はチーム体制も一新したThreeBond Racingから参戦している福住は、午前の予選で16番手につけると、決勝レースでも荒れた展開をくぐり抜け、13周目にピットインした後、ポジションを上げていた。一方、福住のうしろの18番手からスタートしたアレジは「今日はポテンシャルとしては悪くなかったと思う」と福住を追い上げていた。

「今季初ポイントを開幕戦で獲れればと思っていたんですけどね。序盤からセーフティカー中に無線で仁嶺が『このレースは荒れると思います』と言っていたんです。本人も気を引き締めて走っていたと思いますし、最終的にはアレジ選手との9位争いになるだろうと思っていたんです」というのは、ThreeBond Racingの道上龍監督。

 迎えた36周目、アレジはメインストレートで福住のスリップにつけるが、福住はブロックラインをとる。「ほぼ入れないだろう」というラインどりをしていた福住だったが、アレジはピットロード出口の破線をまたぎながら福住のさらにインへ入った。

「正直、彼は止まれないんじゃないかと思っていましたが、そこに入ってきて僕に寄ってきてヒットしました。衝撃で右リヤがパンクして、どうしようもない状況でした」という福住はアウト側のガードレールに、アレジもリヤタイヤを壊しスピンに陥るとTGRコーナーのグラベルにストップした。

 福住は「おそらくガードレールに当たったときに足を打ち付けたみたいで、右膝の内側が少し痛いです」というが、幸い自力でコクピットから脱出。「オンボードを見返しても僕のミスジャッジだったと思う」というアレジは福住にすぐに謝罪したほか、ThreeBond Racingにも謝ったという。

「仁嶺が怪我をしていないか心配だったけれど、大丈夫そうだということだった。このミステイクを繰り返さないようにすることだ。でも明日に向けて切り替えていきたいし、今日良かったところを活かしていきたい」とアレジはこの日のレースを振り返った。

 一方、ThreeBond Racingにとって喉から手が出るほど欲しかったポイント獲得を目指し戦っていた福住は、クラッシュによってレースを失ったことで「僕としても、ポイントをひとつでも多く獲るためにギリギリのレースをするのは当たり前だと思いますが、走り切ってこそのレースだと思っています」といらだちを露わにした。

「あちらがリスクを負って当たってきて、2台ともにリタイアという無駄なレースになってしまいましたが、次のレースに向けてあちらにペナルティが何もないというのは、僕個人としては変えていきたいと思います(編注:この取材後、アレジには第2戦の4グリッド降格のペナルティが出た)」

「ジュリアーノはすぐに謝りに来てくれましたが、結果も変わらないですし、彼はこういうことが多すぎるので……」

 ThreeBond Racingとしては車両を修復し、第2戦に向けた巻き返しを狙いたいところだが、「聞くところによるとパーツが不足しているようなので、そこは心配ですね」と道上監督。アレジのドライビングについては「ブレーキングでラインを変えてはいけないですよね。気持ちは分かるんです。どんどん道がなくなっていくから」と理解はしつつ、「でもそこは引くべきであって、どちらもダメージを受けてしまいますから」と語った。

「明日はスポンサーさんも観に来ますし、なんとかグリッドに並びたいとは思っているのですが……。決勝のセットは良かったようなので、なんとか第2戦も頑張りたいですね」

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