ドイツの旅職人、日本の家造り修業 長崎県諫早市の工務店が受け入れ

「日本の精密な建築技術を身に付けたい」と話すシュトラッサーさん(右)と家屋の建築現場で修業に励むプリースさん=諫早市内

 若手職人が世界を旅しながら修業するドイツの伝統的制度「ヴァルツ(旅職人)」で来日したドイツ人男性2人が、長崎県諫早市の石橋工務店(石橋光成社長)で日本伝統の家造りに挑み、腕を磨いている。
 2人はカイザースラウテルン出身のルーカス・シュトラッサーさん(28)と、フレンスブルク出身のヨルゲ・プリースさん(21)。
 中世から続く旅職人制度は2015年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録。受け入れは、同社が加盟するNPO法人環境共棲住宅「地球の会」(大阪)の交流事業の一環。3年前に続き2例目。
 2人はドイツで修業した後、シュトラッサーさんはスイスやナミビアなど、プリースさんはオーストリアやブラジルなどを経て、3月中旬に来日。4月中旬まで同社で働く。
 旅職人には「3年間と1日、実家から半径50キロ以内に入ってはいけない」「黒いベストや帽子など、ひと目で職人と分かる服装」「パソコンや携帯電話などは持つことができない」などの厳しいルールがある。
 日本の職人が使う道具や木工作品などを見て、日本に興味を持ったという2人。現在、翻訳機を駆使し、同社の若手職人と切磋琢磨(せっさたくま)しながら日本式の住宅建築に取り組んでいる。
 シュトラッサーさんは「1ミリもたがわず精密に作る技術に感銘を受けた。帰国後も経験を生かした仕事がしたい。異文化にも興味があるのでさまざまな町にも行ってみたい」、プリースさんは「日本で家造りの仲間に入れてもらえてうれしい。今後はカナダでも丸太を使った家造りを学び、帰国後は木で自分の家を建てたい」と意気込む。
 石橋社長は「“心を鍛え、技を磨く”という信念で大工を育成しているわが社と相通じるものを感じる。社員がドイツの修業制度に触れ、国際交流や自分たちの仕事を振り返るきっかけにしてほしい」と話した。

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