春の新聞週間

 詩人の長田弘(おさだひろし)さんに「新聞を読む人」という一編がある。〈新聞を読んでいる人が、すっと、目を上げた/ことばを探しているのだ。目が語っていた/ことばを、誰もが探しているのだ/ことばが、読みたいのだ〉…▲人は考え事をするとき、目を上げることが多い。何もない方へ目線を移し、視界に入ってくる情報を遮断するためだと一説にいう。詩の中の人物も何かの記事が目に留まったのか、一心に考え事を始めたらしい▲きょう4月6日は、4(よ)6(む)の語呂合わせから「新聞をヨム日」で、春の新聞週間がスタートした。進学、就職、転勤といった人生の節目に新聞を手にして、道行きの“お供”にしてほしい。そんな願いを「ヨム日」に込める▲昨年の今ごろの本紙で「クイズ王」として知られる伊沢拓司(たくし)さんが新聞について語っていた。クイズをつくるためにインターネットでものを調べるが〈真偽不明のものが多い〉▲ネットでは、素早くて手短な情報がもてはやされる。新聞は〈背景を深掘りしたり、見通しを示したりと速報性を超える〉。そう語っている▲読んでいる人が時にすっと目を上げ、考える。「素早く」や「手短」を超えた役割が新聞にはあるに違いない。〈ことばが、読みたい〉という声に応えられているか。背筋を伸ばす。(徹)

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