「平和文化を市民全てから。居心地のいい街づくり 着実に」4期目へ 広島市 松井一実市長(70) 選挙から一夜明け ラジオで語る

9日、投開票が行われた広島市長選挙で現職の 松井一実さん(70)が当選し、4選を果たしました。一夜明けた10日朝、松井市長はRCCのラジオ番組に出演し、街づくりや平和への発信など、4期目の市政運営について抱負を語りました。

本名正憲 アナウンサー(以下、本名)
おめでとうございます。おはようございます。お疲れさまでございます。ゆうべはお休みになれました?

広島市長選で4選 松井一実 市長
深夜まで選挙結果をずっと見ていましたので。少し、5時間ちょっとぐらい。

本名
4期目ですね。基町高校のご卒業なんですね。すぐ、そば。この辺はよく知っていらっしゃる? すいぶん変わりましたね、広島城の周辺も…。

松井市長
自分が高校のころは、まだ高校のまわりにバラックがいっぱいありまして。それが一変しまして。住環境が変わるっていうのは、だいぶ、みなさんの受け止めとか気分も変わってきますよね

本名
今、どんどん街中も変わっている、その姿を毎日、市民も目にしているところなんですが、松井さん、カープが4連勝、サンフレッチェも4連勝、松井さんも4連勝というところで。奇しくもそういう並びだったんですが、最初に市長選に立たれましたのが、2011年の市長選なんですね。そのときの1つの大きな争点というのが、広島にオリンピック誘致っていうのがあったんですよね。

松井市長
ありましたね。

本名
それで松井さんが、これはもう断念すると明言されて、東京オリンピックへ流れが完全に一本化されたと。そういう意味でいうと、大きな東京オリンピックの誕生にもちょっと1つ関わっていたことになりますね。

松井市長
結果としてですけど…。あのときは、わたしにとっては大きく2つありまして、いまだに引きずっている(広島高速)5号線の問題とオリンピックだったんですね。

オリンピックについては、それまでの流れからして1つの都市でやることの限界、それと、関わったあとの…。オリンピックを開催すると、いろんな施設を作って、“負の遺産” を作るっていうことがいわれている中で、寄付でやるとかっていう素人わかりしやすい処理だったんですけども、長期に渡る大型事業を寄付だけでまかなえるってのはどうなんだろうってのもありましたので、この際、たぶん、本命であるところにやっていただければというような思いで、その当時は決断しました。

5号線は、逆にいろんな問題があるけれども、技術的な話という面とそれから過去の
出来事の市民の不信感、それから将来に向けての広島の街づくりといろんなことを勘案すると、やっぱり、きちっとやっていくという方向がいいんではないかということで、それぞれ別々の、片方はやめて、片方はやり続けるという判断をしました。

広島市長選で4選 松井一実 市長
同時に3つ目の問題として、その直前の市長さんの問題意識が、球場跡地の活用方法。それについて、みなさんの議論が中途半端に終わっているというなことを聞いたので、その2つに決着をつけて、直ちに3つ目の問題の判断を的確にしたいということで、市長になってしばらくして、10月の秋口にはきちっと議論していただくための検討をするための委員会を立ち上げて、球場跡地だけじゃなくって、中央公園全体をどうするかを議論する中で整理をしてもらうということで、おおかた1年3か月かかったかな。

そうした中で今、出てきている、実は図書館などの中央公園にある施設について一通り議論していただいているんですよ。それをみなさん、どうも12年前だから忘れられているんじゃないかと。急に図書館問題が出てきたみたいなことを言われるんですけども、それはそのときにもすでに議論して、図書館の跡地をどうするっていう言い方でもう記述しているんですよ。だから、ある程度、移転ということは前提で、みんな施設を組み替えるという議論を始めましたね。そして、そのところに持ってきて、37万人の署名活動があって、サッカースタジアムを球場跡地にと来たから、先にそちらを整理しなきゃならんということになっていたら、中央公園の市営住宅の南側のところを玉突きで動かせるぐらいのイメージでやっていたのが、結局、球場跡地を大事にしようということで移ったから、動かす先がなくなったんですね。

図書館などは移転した後という言葉で書いたようにある程度、移転するということでやっていたから、どこで移転しましょうかという議論をしていただいて、広島駅前と紙屋町・八丁堀は両方やるんだから、こちらの方を少し考えていただこうかということで、こちらを中心に考えてもらい始めたというところなんですけども。そのへんの議論が足りないと言われているので、もう、いかんともしがたいんだけども、そんな気持ちがありますよね。

本名
そうすると、1期目から現在に至るまでいろいろと事情が変わりつつも、ずっと継続している課題。3期目を手がけられた時点で、やっぱり4期目っていうのは、当然のことながら松井さんご自身の中でおありだった。

松井市長
というのは、いろんなそういう大型の施設の作業が、わたしからすると4年ぐらい、みんな遅れちゃったんですね。サッカースタジアムを先行したために2年から3年、かかりましたでしょう。ですから、それをやりながら、あとソフトについて何とか手をつけたいと思っていたのが、なかなか手付かずで、ようやく去年、コミュニティの活性化であるとかソフトについて、これも2年ぐらいかけて準備をした中で、みなさんに問いかけることができたと、そんな思いなんですね。

本名
これからの4年間、「ハードからソフトへ」っていう言葉も新聞紙面で見られるわけなんですけど、具体的にそういったソフト面がどんどん増えてくると?

広島市長選で4選 松井一実 市長
ソフト面、もう1つは平和文化。最終的にいろんな形で広島の平和の追求の原点は、やっぱり核兵器のない世界。それをベースに、恒久平和であってほしいと願う思いをどういう形で為政者・政治家に届けるかと。それをどう世界に広げるかと、こういう問題だということも受け止めましたので、それについてはもう市長になってしばらくして、平和首長会議という、このメッセージを伝えるための加盟都市を増やそうということで、しばらくして世界で1万都市を目指そうということで、これも今、着実に進んでいまして。8400に増えているが、あとちょっとということで、国内の加盟都市は1741都市のうちのほとんど100%、残り4都市。今度、もう1都市減って3都市になりましたから。あと3都市に入っていただくと全部、加盟なんですね。

為政者にこういった思いを届けるための平和のメッセージを市長がとんがって、いろんなアピールをするというんじゃなくて、市民全ての方がたが思っているんですよという状況設定をするための努力をやってきているつもりなんですね。

そして。その中でそれを象徴するために平和文化というものをみなさんが取り込んで享受する。11月は平和文化月間にし、8月はもともと平和記念式典を開催する月ですから、ここは引き続き、みなさんがそういった議論ができる月。12か月のうち2か月は平和について、みなさんが語らう、そういうセッティングをしてまいりました。これをもっともっと活性化することを通じて、ソフト面の対策を講じて、これを広島市民だけじゃなくて、日本中の、あるいは世界中の市民がこういった思いを持つ時間帯をセットしたいと思っているんですね。

そのためには、日々の生活が安定しているというか、居心地よくなるような条件を設定しないといけないし、逆にそれができるということは、実は平和のありがたさなんですよと、あとから言えるような状況設定をどうするかと。ぐるっと回して考えながら街づくりをやってきているつもりなんですけどね。

本名
2年後、被爆80年という節目がやってまいります。在任期間中にということになりますが、お考えなどありますか?

松井市長
平和文化月間の方からいきますと、11月にやっていますから、まず、これを広島市だけのイベントじゃなくて、少なくとも200万人の広域都市圏をセットしますから近隣の市町挙げてやって、日本の広島を中心とする地域が11月は、もう平和を重視するといういろんな取り組みを見せるということができるようにしていきたいなと。そして、それを平和首長会議で世界の加盟都市にもお願いして、できれば、そういった活動を連携してできるようにするということも実はやりたいんですね。

その大前提として広島で地域も気持ちよく、人々が互助の精神というか、お互い助け合うということを実感していただく取り組みをするというのが、この地域コミュニティーの活性化。そして、そういった方がた同士が交流して、自分たちの生活圏の中でその意識を確認するために、要するに、低料金で利用しやすい公共交通を作る。そして、それが日ごろの生活の中で生かせるということだと思う。それで今度はソフトという意味で公共交通と地域コミュニティー。その上位概念として平和文化をみんなで愛でるというか、共有する。それは習慣化するというか、ずっと続くようにする仕立てを残りの4年でというか、もう、この4年間でどこまでできるかにチャレンジしたいとそう思っています。

本名
平和の発信というものが当然のことながら1つ、大きなテーマとしてあるんだけれども、あくまでも市民生活がベースになっているというところが大きな特徴だと。

松井市長
決して平和の発信は、政治闘争とかメッセージのテーマじゃなくて、そのテーマの根源ですね。自分たちの生活が豊かで居心地のいいものだと、これを崩しちゃならんと。こういうふうに思っていただければ、おのずと出てくる結論なんですね。それを、選んでしまった政治家に向けて、わたしはこう思うと言って、論争を仕掛けてがんばっているっていう、それ自身も重要ですけども、もっと根源的なことをこの広島はやっていくんだと。そんな街にしたいと思っているんです。

本名
一方で人口対策。総務省の人口移動報告で広島市が2522人転出超過になっていて、これが中国地方ではワースト。全国でも下から3番目と、市民にとってはちょっとショッキングな話ではあるんですが、そのあたり、街づくりについては?

広島市長選で4選 松井一実 市長
これは、統計の妙なんですよ。例えば、広島圏域と考えたときに、みなさん、府中町とか海田町を広島市外だと思いでしょうかね。構造的に広島の中に含まれている、わたくしは広域都市圏と考えていますからね。そうしますと、むしろ海田なんかは人口が増えているんです。府中町も増えるんですね。そこらへんのゾーンで考えると、決して減っているわけじゃない。隣接している東広島市まで含めると、広島大学が行ったせいかもわかりませんし、がんばっているから20万人都市に向けて人口が増えているんですよ。そうすると、この地域全体が一緒になって考えるということもしないで、今の行政区画を区切り取って、増えた・減ったという発想はどうも嫌なんですね。

自分は今、申し上げたように広い、このゾーンの中で問題を解決するようにするためにどうするかということと、すでに人口減は2000年代初めぐらいから始まっていて、減るということがいわれていたんですね。だから市長になって、今、足しあげると240~250万人いるんだけども、200万人を割らないようにするために200万広域都市をやっているわけですよ。だから今、始まった話じゃなくて、もう数十年前から起こっていることだから、都市の構造を変えて、この地域全体で人々がい続けるための構造変革をしていると思ってください。その過程で、過去の効果でまだ減っているけれども、今からその傾向をいわゆる是正するための街づくりを今、やっておくというつもりです。

だから、ここで減っているからといって、あわてはしない。これ以上、減らないためにどうするか。この地域で住むことが自分たちにとってプラスだし、お年寄りも互助の精神でいい生活ができるように見せる。すると若い方がたもこの地域で自分たちもい続けようか、あるいは1回、都会に出ても、帰ってきて、この地域で生活するといいなということは実感できる、そういう街づくりを急ぐことがこれからの人口減への対応だと思っているんです。今すぐにJターン・Uターン、こういったことでの効果を上げるということ以上にもっと重要なことは、基盤づくりを今、急ぐということだと、そういうふうに思えて仕方ないんですけどね。

本名
最後にひとこと、ラジオをお聞きの市民のみなさんにお願いします。

広島市長選で4選 松井一実 市長
わたし自身は今、申し上げたような問題意識で市長をこの4年、やり抜きたいと。そんな中でぜひ、わかっていただきたいのは今、起こっているいろんな事象は、過去のわれわれの取り組みの結果がこういった現象を生んでいるわけですね。だから、このパラダイムシフトといいますか、考え方を基本的に改めて、これから10年・20年先に向けて、いい結果を出すために今、何が求められるかと。そういう発想で街づくりをやりますし。これは、今までの流れを変えていくというたいへんな作業ですから、すぐに成果は表れないかもわかりませんけども、ゆっくりであっても着実に物事を変えていくための市政運営ということをやらせていただきたい。そういった目でわたくしの姿勢を見ていただきたいし、いろんな意味でご支援いただきたいなというふうに思っています。

(RCCラジオ「本名正憲のおはようラジオ」 2023年4月10日放送より)

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