HPVワクチン接種急増 勧奨再開 茨城県内 半年で1.5万人

子宮頸(けい)がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、2022年4~9月の茨城県内延べ接種者数が約1万5千人に上ったことが10日、県のまとめで分かった。国が積極的な接種勧奨を再開したことで、前年度の1年間と比べても1.5倍の急増。本年度からは新たなワクチンも加わり、さらに接種者は増えそうだ。

同ワクチンは、子宮頸がんや肛門がんなどの原因となるウイルスを防ぐ。国内では小学6年から高校1年相当の女子を対象に、子宮頸がんを起こしやすい二つの型を防ぐ2価と、四つの型に対応した4価ワクチンが計3回の定期接種として、公費負担で受けられる。

13年に始まった定期接種後、全身の痛みやしびれなどの症状を訴える人が相次ぎ、厚生労働省は同年に積極的勧奨を中止した経緯がある。有効性や安全性に関するデータが蓄積され、昨年4月から8年ぶりに勧奨を再開した。

中止期間に接種の機会を逃した1997年~2005年度生まれの女性には、救済措置として「キャッチアップ接種」を無料で提供している。

県感染症対策課によると、勧奨を中止していた期間の定期接種者は延べ100~500人ほどで推移。20年度から定期接種ワクチンとして適切に情報提供するよう、厚労省が都道府県に通知を始めると、同4393人に拡大。21年度は同9657人に広がった。

22年度は勧奨再開で急増。キャッチアップ接種者を含め、4~9月の半年で1万4539人となり、前年1年間の1.5倍に膨らんだ。定期接種は1回目接種率が33.9%に上った。

今年4月からは9種類の遺伝子型に対応した9価ワクチンが定期接種に追加された。4価ワクチンでカバーできない高リスクの遺伝子型にも有効で、15歳までに接種を受ける場合、2回の定期接種で済むことから、県は「接種希望者は、さらに増えるのでは」と見込んでいる。

県は接種後の副反応への対応として、水戸赤十字病院(水戸市)と筑波大付属病院(つくば市)を協力医療機関に指定。適切な医療提供体制を整え、情報発信を進めている。

県によると、接種後の副反応に関する22年度の相談は5件にとどまり、いずれも軽症だった。国への被害申請もないという。同課は「接種を希望する県民が正しく理解できるよう、情報発信に努めたい」としている。

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