茨城・鹿嶋市 市民の運動習慣推進 健康プログラム対象拡大

鹿嶋市役所=同市平井

人口10万人当たりの医師数が全国平均を大きく下回る鹿行医療圏の茨城県鹿嶋市は2023年度、職員を対象に実施してきた健康増進や生活習慣改善支援プログラムを市民対象に広げる。参加者が自発的に楽しみながら運動を続ける仕組みとなっており、参加した職員のうち約7割が「効果を実感」と回答した。市は「実証実験で成果が出た」と判断し、医療資源の不足を補完するため、市民の意欲的な健康増進を促す。

市は21年度、住友生命保険、医療データ解析などを手がける「PREVENT」と包括連携協定を締結し、プログラムの実証実験を始めた。

プログラムには職員145人が参加。健康診断結果や診療報酬の明細書(レセプトデータ)を提供して、PREVENTが生活習慣病に関するリスクを判定し、グループ分けした。良好な健康状態の139人は住友生命の健康プログラムを活用。例えばウオーキングを続けると、歩いた数でポイントがたまり、ポイント数に応じて大手コーヒーチェーンやコンビニのドリンクチケットがもらえる仕組みだ。市政策推進課の担当者は「ゲーム感覚で楽しみながら運動習慣を身に付けられる」と説明する。

3カ月間実施した結果、取り組み前に「ほぼ運動はしていない」は49.3%だったが、取り組み後は40.6%に減少した半面、「1日30~60分の運動」は26.1%から36.2%に増えた。同課によると、普段歩く歩数は参加者全体で1日平均千歩増えたという。

生活習慣病のリスクが高い、または既に罹患(りかん)していた6人は6カ月間、PREVENTの生活習慣改善支援プログラムに取り組んだ。一人一人に医療専門職が付き、オンラインによる面談のほか、専用機器を使った生活習慣のモニタリング調査も実施した。結果、平均で体重が2.5キロ減少したほか、動脈硬化のリスクが改善した。同課によると、改善により、将来の医療費の削減試算額は年間70万~120万円と出た。

こうした結果を踏まえ、市は国民健康保険加入の市民に対象を広げ、プログラムへの参加者100人を募集している。既にリスクが高いと思われる年齢層には個別に参加募集の案内を郵送した。

運動の習慣化推進の背景には、鹿行医療圏の医療資源が乏しいことが挙げられる。人口10万人当たりの医師数(20年)の全国平均が269.2人に対し、茨城県全体は203.6人で、鹿行医療圏は93.6人と少ない。

市は医療資源の確保に努める一方で、健康づくりによる医療費削減を念頭に置く。担当者は「プログラムは全国的にも珍しい取り組みではないか。強制ではなく、自発的に楽しく進められるもの。市民全体に広げていきたい」と意気込む。

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