「富士山」を強みに大躍進!出遅れたインバウンド銘柄のポテンシャルとは

「なんだかんだ言っても、アメリカ経済は強い」というコンセンサスに、揺らぎが出始めています。2022年にFRBが行った急激な利上げにより、債券価格が大幅下落し、大量に保有していたシリコンバレー銀行が破綻。このことにより、金融機関に対する監視はさらに厳重になり、企業への貸出が厳しくなると危惧されています。

実際、金利が上昇したことで、住宅市場は冷え込みつつあり、個人消費意欲も低下傾向。インフレを制するためにFRBが意図的に行ったことではありますが、その薬は効き過ぎてしまったかもしれません。ここのところ出てくるアメリカの経済指標が弱く、株式市場も弱気な様相です。

一方、日本では街に出るとどこも人でいっぱい! よく利用する品川駅では、スーツケースをコロコロする人たちでごった返していますし、渋谷のスクランブル交差点では、まっすぐ歩けないほどの混雑っぷりです。


出遅れたインバウンド銘柄の大躍進

先日4月10日(月)に発表された3月の景気ウオッチャー調査でも、3ヵ月前と比較して現状の景気はどう感じるかという現状判断DIは53.3。この数字は50が好不況の境目とされており、1月48.6、2月52.9と目に見えて改善されています。さらに2~3ヵ月先の景気の先行きに対する先行き判断DIは54.1と、こちらは2月の50.8から3.3ポイントの大幅上昇。

景気ウォッチャー調査は、小売、飲食、サービスなど、景気に敏感な業種についている人たちにアンケート調査をしたものです。つまりこの結果は、現場の肌感として日本の景気はアゲアゲであることを表しています。

景気の“気”は気持ちの気。であれば、遠い異国の暗い数字よりも、肌で感じてるこの熱いパッションを信じたい。インバウンド関連企業の業績は、まだまだ伸び代があるはずです。

とはいえ、10月の入国制限の大幅緩和によりインバウンド関連とされるスター銘柄はすでに物色され尽くしております。さすがに今から買うのはどうかと思っていた矢先、想定以上に業績好調で上方修正を出した出遅れインバウンド企業がありました。富士急行(9010)です。

画像:富士急行「業績予想の修正に関するお知らせ」より引用

リリースによると2023年3月期、営業収益当初予想①41,640(百万円)から②42,900(百万円)へ3%、営業利益当初予想④3,520(百万円)から⑤4,200(百万円)へ19.3%の上方修正になります。修正の理由としては、10月の入国制限の大幅緩和と、旅行支援などのレジャー需要の回復によるものとあります。

同社の上方修正は今期はじめて。過去、当社の修正履歴をみると確率的には下方修正のほうが多く、どちらかというと当初予想は強気に出す傾向があります。おそらく今回も、当初予想を控えめに出していたわけではなく、そこそこ強気に出したけれど、それ以上に業績の回復パワーが強かったということでしょう。

通期の決算発表は5月10日(水)予定ですが、このタイミングでの修正なので、ほぼ今回発表された数値で着地することが予想されます。となれば、気になるのは新年度予想をどの程度強気に出してくるか、です。

株価にも影響を与えそうな新年度予想

わたしが愛する会社四季報の春号では、今期2023年3月期予想は、営業利益3,600(百万円)、新年度24年3月期は4,000(百万円)となっています。この数字は、今回の会社の上方修正を加味していない数字なので、おそらく次回夏号では、四季報記者の予想も上方修正されると睨んでいます。いずれにしろ、同社がどの程度の予想を出してくるかが重要で、その数字次第では、株価にも大きなインパクトを与えそうです。

ヒントになるのは、3ヵ月ごとの業績の推移です。

今回の上方修正で、2023年度の営業利益は4,200(百万円)でほぼ確定です。第3四半期までの営業利益累計は3,212(百万円)ですので、1-3月は988(百万円)。7-9月が1,914(百万円)、10-12月が1,914(百万円)ですので、少し物足りない気もしますが、同社は1-3月がいちばん利益が小さいという季節性があります。

ちなみにコロナの影響を受けていない2019年1-3月は736(百万円)ですので、予想通りに着地すれば、コロナ前の営業利益を回復します。この勢いがさらに加速するとすれば、新年度予想もそれなりに大きな数字が出ると先読みしてもよいのではないでしょうか?

富士急ハイランド以外にも楽しみどころ満載

富士急行といえば、いちばんに思い浮かぶのが富士急ハイランドです。というか、わたしはそれしか知りませんでした。若い頃は、超高速のジェットコースターも大好きだったのですが、今は心臓に悪いのであまり触手が湧きません。それもあって投資対象としても見ていなかったのですが、ウェブサイトを確認したら、楽しそうな施設がたくさん! すぐにでも予約したいと思ったのは、この4月にオープンしたばかりの「THE GLAMPING箱根十国峠」です。グループ会社のPICAが運営する施設で、富士山を望む大パノラマが楽しめる天空の展望グランピングはとても惹かれます。

そのほか、期間限定で開催している「ピーターラビット イングリッシュガーデン」や「すみっこぐらしイルミネーション」にもうずうず。娘たちに「どっちに行きたい?」と聞いてみると、「どっちも行きたい!」と食い気味に答えました。新宿から送迎バスが出ているので、車を持っていない我が家でも気軽に行けそうです。

世界の「Mt. Fuji」のポテンシャル

同社の強みは、なんといっても「富士山」です。富士山周辺で観光、ホテル、レジャー、運輸をカバーしているため、富士山目的の観光客を丸っと取り込めます。インバウンド需要は、百貨店やドラッグストアだけではありません。「モノ」消費から「コト」消費へと、お金のかけどころが移行しているからこそ、富士山をいろんな形で体験できる場を用意している富士急行には、かなりポテンシャルがあると感じます。

画像:TradingViewより

直近の上方修正で株価は上昇していますが、週足でみると2021年につけた高値にはまだまだ遠く、上昇余地がありそうです。まずは自ら現地に足を運んで、海外旅行者がどれくらい訪れているか確認するつもりです。

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