長崎市長選直前情勢 4新人が戦う構図か 市政継承、争点化の動き

 県都長崎市のリーダーを決める市長選が16日に告示される。4期目の現職、田上富久(66)の退任で16年ぶりのトップ交代。県議の赤木幸仁(38)、前九州運輸局長の鈴木史朗(55)=自民、公明推薦=、同市の会社経営、原拓也(54)、社会福祉法人理事長で元市議の吉富博久(78)の無所属新人4人を軸とした戦いの構図がほぼ固まった。事実上の後継候補となる鈴木に対し、残り3人は現市政の継承の是非や陸上競技場を巡る問題を争点化する動きを見せる。
 「オール長崎で取り組む」。10日夜に市内であった総決起大会。会場を埋めた約1500人(主催者発表)の参加者に鈴木が訴えた。壇上には自民、公明、国民民主各党の県組織や推薦団体の代表らが顔をそろえ、公務の合間を縫って駆けつけた田上も、応援のあいさつに立った。
 「大石(賢吾)知事との定期的な意見交換を含め県としっかりと連携していく」。壇上でこうも強調した鈴木。実際、4月上旬、ひそかに大石と一対一で面会し、自身の政策を説明。早くも「選挙後」を見据えるかのように、県市連携を確認し合った。
 約800の企業・団体の推薦を得て、盤石の態勢に映る鈴木陣営。3月下旬には自民の女性県議2人と「女性の集い」を開き、夫妻でなれそめを語るなど気さくな人柄をアピールした。それでも「まだまだ知られていない」と陣営幹部は上滑りを警戒する。
 県議選が投開票された9日の夜。長崎市区で2万票超の最多得票をたたきだし、初当選した無所属新人の選挙事務所に赤木が顔を出した。組織に頼らない戦略で無党派層の取り込みを図りたい赤木にとって“理想的”な結果。「閉塞(へいそく)感を打破したいとの有権者の思いの表れ」。昨年の知事選から続く世代交代の流れを引き寄せたい考えだ。
 同世代の市議選立候補予定者とも連携し「刷新」を強調。インターネット上の仮想空間「メタバース」の開設なども計画し、若年層の取り込みを目指すが、どこまで浸透できるかは未知数だ。
 吉富は、市公会堂やMICE施設を巡る住民投票の実施に反対した田上市政を「市民不在の政治を徹底的に続けた」と痛烈に批判。「官僚出身の後継候補は田上市政の二の舞いになる」とボルテージを上げる。県の長崎南北幹線道路整備に伴い市が再配置を検討する陸上競技場(松山町)の現地存続を訴える。
 原の事務所の外壁に掲げられた懸垂幕には「長崎を、取り戻す」の文言。街頭で「人口減少の流れを変えないといけない。官僚や役人の発想ではなく、民間の自由な発想が今こそ必要だ」と主張する。

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