石木ダム 耕作地に土砂搬入で「生活基盤の破壊」 反対住民ら県庁で抗議

県に抗議する石木ダム反対住民ら(左側)=県庁

 長崎県が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で強制収用した耕作地に土砂を搬入したことに対し、反対住民6人を含む約20人が12日、県庁に出向き、「生活基盤の破壊だ」と抗議した。県側は「工程通り進める」と繰り返し、双方の主張は平行線をたどった。
 住民の石丸勇さん(73)は「私たちが怒りを持つやり方。(大石賢吾)知事が話し合いを模索する動きはパフォーマンス」と批判。1972年に県と住民が交わした「地元の同意を得てから建設する」という覚書にも触れ、「この精神は消えていない」と強調した。
 松本憲明県河川課長らは土地収用法に基づき所有権が国に移ったと説明。水没予定地の13世帯に対し、耕作しないよう求めた文書を2月に送付済みとし、「県民の安心安全のため早期に完成するのが行政の責務」と繰り返した。
 住民によると、土砂搬入で水路がふさがれるなどして4世帯の田畑で耕作できなくなった。工事による土ぼこりや騒音も増している。住民は「『耕作するな』は『生活するな』と同じ」「人道的配慮がない」などと訴えた。
 終了後、記者会見した住民の一人は「県は既成事実を積み重ね、地元が反発しなければ次に進めるという姿勢が横暴になっている」と問題視した。

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