社説:「ステマ」規制 野放し改め消費者守れ

 広告なら広告だと隠さずに示すべきであり、消費者を欺く行為は許されない。

 一般の口コミを装い、インターネットや交流サイト(SNS)で商品などを宣伝する「ステルスマーケティング(ステマ)」について、政府は景品表示法が禁じる不当表示の類型に新たに指定した。

 広告と分かれば抱くはずの警戒心を薄め、正常な商品選択を妨害するのがステマである。欧米では法規制が進んでいるが、日本は野放し状態が続いてきた。

 ようやく10月1日から施行され、違反行為は行政処分の対象となる。十分周知し、規制の実効性を高めなくてはならない。企業や広告業界は襟を正してほしい。

 ステマには、企業などの広告主がSNS上で影響力を持つ「インフルエンサー」らに対価を支払い、自発的な感想であるかのように装って、商品やサービスを宣伝してもらうといった手法がある。

 消費者庁の運用基準によると、事業者の広告であるにもかかわらず、一般消費者が広告と判別することが困難なものが規制される。「広告」と明記されていない場合などが該当する。

 広告であるかどうかは、投稿内容についての指示や確認があったかなど、事業者の関与の有無で判断するという。

 通報を受け付ける窓口の設置を含め、情報を集めて速やかに取り締まる態勢づくりが欠かせない。

 ただ規制対象は事業者であり、インフルエンサーは外れている。海外と比べると日本の規制にはあいまいさが残っている。運用の効果を踏まえ、改めて見直しも必要だろう。

 消費者庁のアンケートでは、インフルエンサーの41%がステマを頼まれた経験があり、うち45%が応じたと答えた。「ステマ天国」の実態が浮き彫りになっている。

 税金を使う行政の施策でも疑われる例が後を絶たない。

 今年1月には、自転車で琵琶湖を一周する「ビワイチ」を巡り、滋賀県が事務局を務める協議会が、補助金を支払ってユーチューバーのPR動画の制作を委託しながら、動画に広告主を明示していなかったことが判明した。

 著名人らを通じた公的機関の情報発信は増えている。公正な広報活動の在り方が問われよう。

 ネットには、さまざまなガイドや評価があふれている。ステマかどうか、消費者も注意力を高めたい。情報の真偽を見極められるよう教育や啓発も大切だ。

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