BTCCシーズンラウンチ開催。新王者イングラムのヒョンデに元王者サットンのフォードが追随

 共通ハイブリッド機構導入2年目を迎える2023年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権に向け、4月12日に開幕前唯一となる公式プレシーズンテストがブランズハッチで実施された。今季参戦予定の全27台中、数台が不参加となったセッションでは、前年に初タイトルを獲得したトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が幸先良くトップタイムを記録。その背後に覇権奪回を目指す元王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が続いている。

 グループテスト前日の火曜にロンドン・ゴルフクラブで行われたシーズンラウンチでは、クプラ陣営のチームHARDが6台体制に拡大し、直前のショッキングなチーム・ダイナミクス参戦休止発表により、今季唯一のホンダ・ユーザーとなったワン・モータースポーツ・ウィズ・スターライン・レーシング(旧BTCレーシング)が、ウィル・パウエル含む3台体制を明らかにするなど、開幕に向けグリッドを埋めるすべてのシートが明らかとなった。

 また、導入2年目の微調整としてハイブリッドシステムの使用可能時間の短縮や、選択されたイベントでのオプションタイヤの運用方法など、スポーティング・レギュレーションに関して多くの改訂も行われ、好評だった予選トップ10シュートアウトも、全5戦での実施に拡大された。

「オフシーズン中も相変わらず忙しかったが、今は2023年シーズンが始まるのが待ち切れない気分だ」とシリーズ運営団体TOCAの代表を務めるアラン・ゴウ。

「チャンピオンシップはふたたび競争力のあるドライバーラインアップを誇っており、タイトルを獲得しようとする真の候補者数が増え続けている。誰がトップに立つのかを見るのは本当に興味深いね」

「昨年のハイブリッド導入は成功しファンの間でも人気があったが、2023年の競争力をさらに高めるために、ハイブリッドの展開方法を微調整する方法を見い出した。これに加えて、グッドイヤーのオプションタイヤ再導入と、全10戦のうち5戦で実施する『トップ10ショーダウン』が非常にエキサイティングなシーズンを演出するだろう」

「すべての人々に、2023年のBTCCシーズンを楽しんでいただければ幸いだ」

 明けた水曜は午前からレインシャワーに見舞われる展開となり、午後のセッション終盤も豪雨により、幾度もセッション中断や走行見合わせを強いられる。そんななか、天候変化の合間を縫ったイングラムが午前に47秒928のタイムを記録し、サットンのタイムを0.048秒更新して総合トップに立った。

テスト前日の火曜には、ロンドン・ゴルフクラブでシーズンラウンチのパーティも行われた
覇権奪回を期す元王者アシュリー・サットン(NAPA Racing UK/フォード・フォーカスST)も、手応えを得る2番手に
トップタイムの王者トム・イングラム(BRISTOL STREET MOTORS with EXCELR8/ヒョンデi30 Fastback N Performance)は、翌日もプライベートテストを継続した
昨季タイトルを争ったジェイク・ヒル(Laser Tools Racing with MB Motorsport/BMW 330e M-Sport)は6番手

■サットンも4度目の戴冠に自信「シーズン前に必要な調整を行うことができた」

「路面は少し濡れて……いや、全然少しじゃなかったね(笑)。でも午前中の走行はうまくいき、クルマのフィーリングはとても良くなった。(次週の開幕戦)ドニントンパークでもこれが続けば良いね」と、手応えを語ったディフェンディングチャンピオン。

 一方、昨季は3連覇を逃して惜しくもランキング2位に甘んじたサットンも、キャリア4回目の王座に自信を見せる。

「2022年は(移籍の)契約が実際に1月下旬に終わったばかりだったから、充分に早い段階でクルマを手に入れることができなかった。でも今季はシーズンが始まる前に必要な調整を行うことができたし、昨季の経験により何をどう調整すれば良いか、充分な知識も手にしている」と、所属するモーターベース・パフォーマンスとのコンビネーションも挙げたサットン。

「実際にはドニントンに着いてから……だけど、肉体的にも精神的にもこれまでで最高の状態にあると感じている。冬の間のチームの準備に関しても最高の気分だし、僕らはみんな意気揚々としている。すべてが良さそうだね」

 その言葉どおり、新加入の僚友ダニエル・ロウボトムが3番手、ダン・カミッシュが5番手と、モーターベース勢は好調さを披露。そこに割って入った4番手は、今季より名門チューナーのニール・ブラウン・エンジニアリングが手掛けるトヨタ製ユニットを搭載した『トヨタ・カローラGRスポーツ』のロリー・ブッチャーとなり、新たにTOYOTA GAZOO Racing UKことスピードワーク・モータースポーツ(SWM)に加入したジョージ・ギャンブルもトップ10入りを果たすなど、堅実な走り出しを見せた。

 そのフォードとトヨタの背後には、今季もファクトリー体制のチームBMWとして参戦する名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)のBMW勢が続き、昨季タイトルを争ったジェイク・ヒル(レーザー・ツール・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)と“4冠王者”コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)が6、7番手。新加入のアダム・モーガンも、旧BTCレーシング時代からエースを務めるジョシュ・クック(ワン・モータースポーツ・ウィズ・スターライン・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)を挟んで9番手に入っている。

今季より名門『Team Dynamics』のサポートを得て、Neil Brown製ホンダ・ユニットで戦うジョシュ・クック(One Motorsport with Starline Racing/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)
同じくTOCA共通エンジンからNeil Brownのトヨタ製ユニットを搭載する『トヨタ・カローラGR Sport』、ロリー・ブッチャー
直前に体制発表を実施したニック・ハミルトン(左)擁するTeam HARD勢は、コスワースからのハイブリッド機構供給待ちで走行できず
開幕戦ドニントンパークは4月21~23日に開催される

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