卵の卸値6割高、スーパーでは100円アップ…「鶏卵ショック」にため息、悲鳴 福井のご当地グルメは苦渋の値上げ

価格高騰する卵の売り場。売れ行きの良い特売品も、昨年末に比べると50円ほど高い=4月14日、福井県福井市江守中町のハニー新鮮館ディーンストアえもり中店

 全国的な鶏卵不足「鶏卵ショック」が福井県内にも波及している。県内養鶏場で鳥インフルエンザの発生はないが、全国的な品薄で県内の卸売業者の卸値は1年前と比べて6割高。卵を使ったご当地グルメも値上げするなど影響は広範囲に及んでいる。

 ■綱渡りの飲食店

 「原材料価格高騰のため(特に卵)、流通も不安定な状況の中…」。越前市の飲食店「江戸屋」に、店主の切実な訴えが張り出された。今月仕入れ先から価格改定の通知が届き、2度の値上げで価格高騰前から約6割増となった。10年以上価格を据え置く名物のボルガライス(トンカツのせオムライス)を今月末から、並盛りで100円値上げすることを決めた。

 店主の栗塚明さんは「卵は多いとき1日10キロ使う。ボルガライスには1人前3~4個を使うので、値上げは苦渋の決断だがやむを得ない」。今月に入り既にソースカツ丼などに付けていた卵フライを有料化。このほか業務用マヨネーズはメーカーの計画出荷で在庫は乏しく、綱渡りの状況だ。

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 ■価格転嫁追いつかず

 福井県鶏卵卸商業協同組合の今月初めの基準卸値は、Mサイズ1キロ当たり454円。前年同期(280円)の6割高となった。全国的に鳥インフルが広がり始めた昨年10月ごろから価格は上昇一辺倒で、例年なら価格が下がる年始にも高値をつけた。

 「価格改定には数カ月かかる。その頃にはもっと仕入れ値が上がり、価格転嫁が追いつかない」と、県内の卸売業者はため息をつく。供給自体はやや戻りつつあるが「鳥インフル未発生県でも、都市部で高く売れるなら生産者はそちらに販路を広げるだろう。元々利益が薄い上、モノが手に入らなければ稼ぎようがない」と嘆く。

 ■各業界から悲鳴

 県内のスーパーにも影響が広がる。福井市江守中町の「ハニー新鮮館ディーンストアえもり中店」では、供給量は安定しているものの、小売価格は昨年末から100円近く上昇。長谷川啓店長は「少しでも安いものを買おうと、6個入りパックを選ぶ人が増えている」と話す。販売量も卵全体で1週間当たり通常約1千パックだったのが、約600~800パックに減少。弁当に使うオムレツなどの加工品でも入荷制限がかかる商品がある。

 悲鳴を上げるのは生産現場も同じだ。土田鶏卵(福井市)の上野顕士社長は「県内では安定生産できているが、餌代は以前の2倍。売り上げが上がっても、利益面はほぼ変わらない」と明かす。

 鶏卵ショックはいつまで続くのか。上野社長は「今がピークだと思っている」と話す。一方で「これから価格が下がっても、餌代の上昇分を踏まえないと廃業する農家が増える。そうなると供給不足が加速し、かえって価格が高くなる」と危機感を募らせる。

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