なぜバフェット氏は日本5大商社へ投資するのか−−投資の神様が実践する「バリュー株投資」のメリットとデメリット

長期投資の有力な選択肢の1つとして「バリュー株投資」という手法があります。バリュー株とは、市場で過小評価されているとされる企業の株式のことを指します。バリュー株投資は、割安な企業を見つけ、その企業が適正評価に戻ることを期待して投資を行う手法です。

バリュー株投資というと、米著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が実践されていることでも有名です。そのバフェット氏が、日本株への追加投資を検討していると報じられたことが話題になりました。4月11日(火)には日本経済新聞社が、バフェット氏の日本5大商社株の保有比率がそろって7.4%に高まったことも明かしたと報じました。

“投資の神様”と呼ばれるバフェット氏が日本株を買い増ししたことで、日本株市場全体の追い風となるとともに、海外投資家が日本株に注目してくることも考えられます。そう考えると、いま日本株はとってもホットかもしれません。

皆様の中でも、高利回りな銘柄を保有することで、資産を構築していきたいと言うバフェット氏のスタイルでの投資を目指している方がいらっしゃると思います。今回は、なぜバフェット氏が5大商社株を購入したと考えられるのか、バリュー投資のメリットとデメリットなどをお伝えしていきます。


投資の神様・バフェット氏が日本の5大商社に投資した理由

バフェット氏が、伊藤忠商事・三菱商事・三井物産・住友商事・丸紅という5大商社株を買ったことがサプライズとなったのは、2年前の2020年8月のことでした。米国株投資ばかりしていたバフェット氏が、日本市場に初めて大規模な投資を行ったとビッグニュースになりました。

一方で、日本の5大商社の株は高配当利回りなのに割安で放置されていた部分があったので、バフェット氏の目の付け所に唸った方、納得した方もいらっしゃったと思います。バフェット氏が5大商社株を購入した理由は、以下3点が考えられます。

(1)安定的なキャッシュフロー
日本の大手商社は多角化された事業を展開しており、安定したキャッシュフローを維持しています。これは、バフェット氏が好む投資先の特徴の一つです。

(2)株価の割安さ
2020年当時、5大商社の株価は、収益性や資産価値に比べて割安な水準にあったとされています。バフェット氏は、長期的な価値を見出すことで知られており、割安な投資先を好む傾向があります。

(3)配当利回り
5大商社は、比較的高い配当利回りを持っています。バフェット氏は、安定した配当収入を重視する投資家として知られており、この点も彼の投資判断に影響したと考えられます。

バリュー株投資のメリットとデメリット

バリュー株投資のメリットは、以下の通りです。

(1)割安感
バリュー株は、株価が企業の実質的な価値を下回っていると考えられるため、投資家にとっては割安感があります。これにより、適正評価に戻るときに利益が得られる可能性が高まります。

(2)長期的なリターン
バリュー株は通常、堅実な業績や資産を持つ企業であるため、長期的なリターンが期待できます。成長株に比べて、リスクが低いことが多いです。

(3)安定した配当
バリュー株は、安定した利益と資金繰りを持つ企業が多いため、配当が安定して支払われることが一般的です。長期投資家にとっては、配当収入が魅力的なポイントです。

(4)サイクリカルな相場での優位性
2022年に長期金利が上昇し、米市場全体が下落した時にバリュー株が物色されたことは記憶に新しいですが、株式市場全体が下がるときでも、グロース株と比べて株価の下落率が比較的に小さいと言えます。経済が不安定な局面などでバリュー株が好まれることがあり、成長性よりも安定性が評価されるため、投資家にとって魅力的な選択肢となります。セクターローテーションと言って、グロース株からバリュー株に資金が動くこともあるので押さえておきましょう。

ただし、バリュー株投資にもデメリットはあります。

(1)バリュートラップ
割安に見える企業が、実際には業績の悪化や競争力の低下などの理由で割安である場合があります。このような状況をバリュートラップといい、投資家が損失を被るリスクがあります。

(2)株価の上昇が遅い
バリュー株は、成長株に比べて株価の上昇が緩やかであることが多いです。したがって、短期的な利益を追求する投資家には向かない場合があります。

(3)業績の評価が難しい
バリュー株投資では、企業の適正評価を見極めることが重要ですが、それが容易ではありません。正確な企業分析や業界知識が求められます。

(4)時代の変化への適応
バリュー株の中には、新興産業や技術革新に適応できず、市場競争力が低下する企業もあります。このような企業に投資すると、リターンが低下するリスクがあります。

結論として、バリュー株投資は優れた企業を割安な価格で購入できるチャンスを提供し、長期的なリターンを目指す投資家にとって魅力的な選択肢となります。ただし、メリットとデメリットを把握し、自分の投資の目的や投資スタイルなどにマッチしているか考えながら、銘柄が偏っていないか配当利回りの動向なども把握して投資することが必要となるのではないでしょうか。

なお、バリュー株投資を実践するうえでは、ポートフォリオを把握することが大切です。投資は長期的な視野と堅実な判断が鍵となりますので、月ごとの配当額の偏りをチェックしたり、前月や前年との比較なども行い、銘柄の偏りや配当額、利回りのバランスを整える必要があります。ポートフォリオを見える化することで、そういった戦略を立てられるようになるのです。皆様の参考になれば幸いです。

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