総資産9000万あってもお金の不安が尽きない夫婦「教育費補助は受けられないし税負担も重い」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、41歳、会社員の男性。夫婦の年収は1,400万円あり、総資産は9,000万ほど。それでも、児童手当や教育費の補助は所得制限で受けられず、住宅取得もまだということもあって今後が不安とのこと。FPの渡邊裕介氏がお答えします。


世帯年収1,400万円で、金融資産は9,000万円ほどあります。

資産だけ見ると住宅購入をしていないので多く見えますが、15歳以下の子どもは扶養控除がなく、児童手当は所得制限により廃止され、独身の人と同じ税率の中、今後の子育て費用が心配です。累進課税も重くのしかかります。子ども未来応援給付金10万円も対象外でした。

さらに、奨学金は所得制限で申し込みすらできず、こんなことなら一人っ子を選択したら良かったと後悔しています。

50歳を超えると年収が大幅に下がるか転職となり、心配は尽きません。そんな中、今一番気になるお金の質問は以下の二つです。

1.東京都心へ通勤30分以内の3LDKマンションを7年後に購入希望。余裕ある老後を迎えるには住宅購入価格はどの位までに設定するべきでしょうか?

2.子ども2人が私立高校を志望。高校無償化対象外のため、今後の教育費が心配。私立高進学は可能でしょうか?大学は自宅から通える私立大学と考えています。

なお今まで家計簿をつけたことがなく、貯蓄に関しては全て給料天引き、積み立てにしています。残った分を自由に使うスタイルでずっときています。

【相談者プロフィール】

・男性、41歳、会社員

・妻:42歳(パート、年収70万円) ・子ども:11歳、13歳

・住居の形態:借り上げ社宅(家賃補助12万円あり・関東地方)

・毎月の世帯の手取り金額:52万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:410万円

・毎月の世帯の支出の目安:27万3,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:2万円

・食費:8万5,000円

・水道光熱費:1万7,000円

・教育費:5万5,000円(長子塾、給食費、校納金2人分の合計)

・保険料:1万4,000円

・通信費:7,000円(スマホ3台、Wi-Fiの合計料金)

・お小遣い:3万円

・その他:1万5,000円(駐車場代金)、3万円(雑費)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:9万円

・ボーナスからの貯金額:150万円(ジュニアNISA2人分年間160万円、年間旅行費70万円、車検、服飾費を引いた残り)

・現在の貯金総額(投資分は含まない):5,230万円

・現在の投資総額:3,800万円

・現在の負債総額:0円(奨学金500万円完済)

【その他】

・投資:毎月・夫10万円、妻5万円(つみたてNISA、特定口座で投資信託を積み立て中。内訳は日本株個別株2,900万円、投資信託870万円(S&P500;、オールカントリー、ジュニアNISA他)

・年間配当金・60万円

・車を8年後に買い換え予定

渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。
今回のご相談は、将来の住宅購入に関してです。おそらく家賃補助が終了するであろう7年後に、都心から通勤30分以内のエリアで3LDKのマンションの購入を考えており、余裕ある老後を迎えるためにはどのくらいの金額のマンションの購入が適正かというご相談です。

相談者の不安は大きく4つに分類できる

まずは、現状について整理していきましょう。

現在、世帯年収は1,400万円、現在の預貯金等で5,230万円、それとは別に個別株や投資信託等で3,800万円とで、合計9,030万円となり、一般的な同世代でお子さま2名世帯の中では、かなり良好な資産状況といえます。

このような中で、ご相談者が将来に対して不安な原因は、大きく4つ想定されます。

(1)お子さまの教育費に今後どれくらい必要なのかが見えておらず、子育て支援があまり期待できない中での今後の費用負担に対する不安
(2)50歳以降に収入が大幅に減少する不安
(3)家賃補助を最大限活用するため、住宅購入の時期が遅くなり、ローン返済への不安
(4)老後安心して暮らせるかどうかの不安

多くの場合、将来への不安は見えないことに対する不安です。一つずつ整理して「見える化」していくと安心に繋がります。一つずつ確認していきましょう。

まずは教育費を「見える化」してみよう

まずは、(1)の教育費に対する不安です。ご相談者は、高校から私立、大学は自宅から通える私立大学を志望されているとのことです。

この表は、小学校から大学までの公立・私立の教育費の平均額です。もし、私立の高校に通わせたいと考えると、1人当たり約300万円かかることになります。私立大学の場合は文系と理系で差があり、約700万円~約860万円となります。

仮に、お子さまが2人とも理系を想定すると、1人当たり1160万円×2名で、約2,320万円を確保できれば、高校と大学の教育費については安心して良いでしょう。

もちろん、全て貯蓄からではなく、現在のように家計の収支から教育費として拠出することもできます。ですから全額を準備しなければいけないという訳ではないですが、50歳以降に収入が減収する可能性があるのであれば、ご相談者にとっては、手元の貯蓄で確保しておくことが一番の安心に繋がるのではないでしょうか。

50歳以降、どれくらい収入が減るか想定してみよう

次に、(2)の50歳以降の収入減少に関する不安です。これについては、まずはどれくらい収入が減少する見込みなのかを調べることが重要です。9年後と少し期間があるので、確実な額は分からないにせよ、ある程度どれくらいの金額になる可能性があるのか想定しておくことで、将来の収入減少に備えることができます。収入が減少し、年間の家計の収支では賄えなくなる可能性がある場合には、これからの9年間でそのための準備をする必要があります。

現段階で、将来の支出アップが想定される項目としては、「教育費」「住居費(住宅ローン)」「食費等生活費」が考えられます。特に「教育費」と「住居費(住宅ローン)」については大きな比率を占めますので、注意が必要です。(1)で「教育費」については目安ができましたので確保するとして、「住居費(住宅ローン)」については、(3)で具体的に考えてみましょう。

ローンは完全リタイアまでの17年間で完済を目指す

(3)の将来の住宅購入に関する費用的な不安について。ご相談者はお子さまの教育費と余裕のある老後を確保した上での住宅購入を希望されています。

購入予定の年齢が48歳になりますので、住宅ローンを組むのであれば返済期間も重要となります。何歳までお仕事をされるかにもよりますが、最近は65歳までは最低でも働く方も増えてきているので、仮に65歳まで働くとすると、住宅購入してから完全リタイアするまでは17年間となります。実際の住宅ローンは20年や25年で組むのもありだと思いますが、17年間で完済できる範囲で購入すると安心です。

理想の老後を具体的に描いてみよう

合わせて(4)についても考えてみましょう。

ご相談者にとって、余裕のある老後とはどういう生活でしょうか。お子さまが社会人になるなど経済的に独立して、ご夫婦お2人の生活となった時に、実現したい理想の生活をイメージしてみてください。それぞれ楽しみたい趣味がある、おいしいものを食べたい、定期的に旅行にいきたい、経済的な不安のない生活が出来れば十分、などなど人それぞれ描いている将来像があるはずです。

それを実現するためには、どれくらい生活費として必要なのかを考えることが重要です。公的年金としてどれくらい受給できるのか、退職金はあるのかないのか、それらに合わせて65歳以降に準備するべき金額を試算してみてください。それらを考慮することが、(3)の安心な住宅購入計画に繋がります。

ご相談者は、うまく運用も取り入れながら、貯蓄と運用のバランスを取って資産形成をされており、素晴らしいと思います。せっかくのその取組みを安心な生活に繋げるためにも、より具体的に経済的な夢や目標を「見える化」し、明確な目標を持った貯蓄や運用を目指してください。

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