「不明となる10分前はミニカーを持って座っていた」 広島・5歳児死亡 1年で何がどう変わった?

1年前の4月16日、広島市の保育園で行方が分からなくなった5歳の男の子は、園の近くの川で見つかり、亡くなりました。

男の子が見つかった川には、きょう(16日)、花が手向けられていました。

事故後の会見で広島市は、「保育士が最後に確認できたのは、園庭の隅にある手洗い場でミニカーを持って座っていた」と男の子の園内での様子を説明していました。

事故当日の経緯はこうです。

午前9時すぎに登園した男の子は、午前10時過ぎからほかの園児23人と保育士2人と一緒に園庭で遊んでいました。午前11時20分ごろ、園庭の手洗い場でミニカーを持って遊んでいるところが確認されています。その10分後の午前11時半ごろ、保育士が男の子がいなくなっていることに気づきました。男の子は、このわずか10分の間に園の外に出たとみられています。

園では園内の捜索を始め、男の子の家族に連絡し、自宅にも帰っていないことから、午後0時半前、警察に通報しました。

警察と園の周辺を捜索していたところ、午後2時半すぎ、園近くの太田川放水路の砂地で保育士が、倒れている園児を発見しました。

事故を受け、設置された有識者の検証委員会は、去年12月、「園児がどうやって園外に出たのかは特定できなかった」としながら、園外に出ることができる環境にあったことが課題と指摘。ハード・ソフト面での改善を市などに求めました。そして、この検証委員会から提言を受けた市は、1月、再発防止に向けた取り組み方針をまとめていました。

痛ましい事故から1年…。現状はどうなっているのでしょうか?

ハード面について、事故があった保育園では、亡くなった園児が生垣から園外に出た可能性もあることから、市立保育園のうち、生垣だけで敷地を囲んでいた10の園について、今年度以降、高さ150センチ程度のフェンスの設置を始めます。また、すべての市立保育園の門に防犯カメラを取りつける予定です。

ソフト面については、園児が行方不明になったときの対応マニュアルを昨年度、改定したほか、今年度からは配慮を要する園児への加配基準を1日4時間から8時間に改善したということです。

一方、出入口からの園児のすり抜け防止策については、対応策の検討に2年を要する見込みで、ICTを活用した園児の見守りについては、ほかの都市の実践例を踏まえた研究を行うとして、実施は25年度以降になる見通しです。

職員への無線インカム導入は、今年度、4園での施行導入予定に留まっています。

また、保育士の負担軽減などのため、3歳児15人に対して1人の保育士を配置するよう独自に見直しを検討するとしていますが、これも対応は25年度以降になる見込みです。

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