なぜ盗まれた?「側溝のふた」 相次ぐ被害 背景に“鉄スクラップ”高騰か=静岡・掛川市

4月15日、静岡県掛川市で市道の側溝に設置されていた「グレーチング」と呼ばれるふたが約100枚盗まれていたことが判明しました。1枚20kgのふたがなぜ大量に盗まれているのか?その背景にあるとみられるのが鉄スクラップの高騰です。

御前崎市で機械部品などをつくる鋳物工場です。

<栗田産業 栗田徳光専務>

「こちらが原料ですね、純鉄でして、スチールスクラップです。これを元にして溶解炉で溶かして鋳物にします」

鋳物の原料の97%を占めるのが、いったん製品として使われた後、廃棄物として回収された鉄スクラップです。この鉄スクラップは加工しやすいのが特徴です。

<栗田産業 栗田徳光専務>

Q.鋳物には欠かせないもの?

「鉄源がないと商売ができませんので」

鉄スクラップは主に建築物や自動車の解体現場から回収されるものですが、この貴重な資源を狙ったとみられる悪質な犯罪が発覚しました。

<清水英之記者>

「草に隠れて分かりにくいですが、側溝のふたグレーチングがあり、ここでなくなります。そしてその先もまったくありません」

いつの間にかなくなっていた側溝のふた「グレーチング」。15日朝、掛川市東山の市道でグレーチング約100枚がなくなっているのを近くに住む人が見つけました。盗まれたグレーチングは長さ1mほどで、重さは20kgほどでした。

<掛川市東山区 山城菊夫区長>

「子どもたちの通学路にもなっているので大変怒っている」

掛川市では4月9日にも同じ市道で75枚のふたがなくなっていて、被害額は合わせて230万円ほどに。警察は窃盗事件として捜査を開始、17日午後、現場検証を実施しました。

<掛川市都市建設部 井口浩一係長>

「対策については、例えば固定する、連結させるなどが考えられる。そのようなことを含めて検討をして、地元区の皆さんと相談しながら進めていきたい」

道路の脇にあったはずのふたが突然盗まれた今回の事件。思わぬ落輪事故につながる危険性があると専門家は指摘します。

<JAF静岡支部事業係 永谷和俊係長>

「山間部になると路肩に草が生えているので、そういったところで側溝が隠れてしまう。あるのかないのか分からない状態が散見される」

なぜ、鉄のふたは大量に盗まれてしまったのか?その背景について鉄スクラップを扱う業者は、価格の高止まりを挙げています。

<山美商店 山本龍典専務>

「買値で40円以上くらいは金額がついている。4年前の令和元年くらいだと15円前後なので30円くらいの差がある。いま価値が上がっている」

コロナ禍でいったん需要が減った鉄スクラップですが、世界各国が経済活動を再開させると価格は上昇傾向に。世界的なインフレもあり、鉄スクラップの価格は高水準で推移しているのです。

盗まれたグレーチングは闇ルートで流通しているものとみられ、警察は再発防止に向け今後付近のパトロールを強化するほか、犯人逮捕に向け捜査を進めています。

背景には、環境問題も絡んでいるといわれています。通常、鉄は鉄鉱石とコークスを2000℃を超える高炉に投入して取り出します。この際、熱とともに大量の二酸化炭素を吐き出す仕組みです。

一方、鉄スクラップは電気を使った電炉で溶かされるため、高炉に比べると大幅に二酸化炭素を削減できます。業界関係者によりますと鉄スクラップは「クリーン素材」として需要が高く、国際的な価格も上がっているということです。

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