ウニがまさかの邪魔者⁉「醤油がなくてもおいしい」水産高校生が“野菜”で育てた

高級食材が厄介者に。こんな問題を解消するため、高校生が立ち上がりました。実はいま、静岡市駿河区の用宗海岸では、ウニによる食害に地元の漁師たちが悩まされています。このウニを捕獲して養殖することで、静岡産のウニを売り出そうとしています。

黄色のプリッとした身が多くの人を引き付ける寿司ネタのウニ。静岡県焼津市で地魚が楽しめる寿司店では、この高級食材の仕入れ値が極端に上がっています。

<地魚定 庵原克城店主>

「ウニは嫌いな人いないので『あ!ウニだ』というけど、なにせ高い。県外から来た人は、地元のウニ、焼津で上がったウニを食べられることは、すごく喜ぶと思う」

地元産のウニを低価格で仕入れることができないのか。そんな希望をかなえようと、地元の水産高校が実験を始めました。

焼津水産高校の臨海実習場。この施設でいま、養殖されているのが高級食材のウニです。

<焼津水産高校3年 佐々木素晴さん>

Q何匹ぐらいいるのか

「いま全体で87匹を飼育しています」

今回のウニ養殖プロジェクトには、埼玉県の漬物メーカーも協力。漬物を製造する際に余った白菜やキャベツなどをウニの餌にしています。

<焼津水産高校3年 岡田さくらさん>

「ぞれぞれ野菜を変えて、対照実験をしていて、2か月の間でどの野菜が一番生殖腺(食べられる部分)が大きくなるかの実験とおいしくなるかの実験をしています」

ウニは水温が低いと食欲が落ちてしまい、育ちが悪くなる危険性がありますが、この施設のように地上で養殖することによって、ボイラーで水温を保ち、冬でもウニが育つよう管理ができます。

<焼津水産高校3年 大塚唯杏さん>

「ウニを食べるときは醤油をつけて食べていたけど、醤油がなくても海水で育っているので、しょっぱくて普通に食べてもおいしかった」

2022年12月から本格的に開始したウニ養殖プロジェクト。このウニは元々どこにいたのかというと、焼津のお隣、静岡市の用宗漁港です。

近年、観光地としても注目が集まる用宗では、地元の新たな名産として「アカモク」が注目されています。用宗では、アカモクがとれるのですが、実はこのアカモクと同じような場所にムラサキウニが生息していて、ウニがアカモクを食べてしまうのです。

残念ながら用宗港付近のウニは、身が少なく、商品価値はほぼゼロ。漁師にとってウニは、厄介者になっています。

<清水漁協用宗支所 斉藤貴浩さん>

「ウニが増えてしまって、海藻が食べられて減ってきてしまうと、その海藻を餌としてきた貝類も減ってきてしまうので、ウニは邪魔者だと思っている」

焼津水産高校に引き取られた価値のないウニですが、新たな環境でぐんぐん育ち、3か月程度で市場に出回るウニに近い身入りにまで成長したということです。

<焼津水産高校3年 岡田さくらさん>

「磯焼けの問題でウニが邪魔者扱いされているなら、ウニに価値をつけてあげて邪魔じゃないものにしてあげるのは今後も続けていきたい」

焼津水産高校では、今後もウニの成長を促す方法を見つけるために実験を続け、安定供給できるようになれば、レストランにウニの提供を始めたいとしています。

© 静岡放送株式会社