投票機会ない統一選 「トリプル無投票」の芳賀  町議選は定数割れ

芳賀町議選のポスターが張られた掲示場。定数14に対し立候補は12人だった=18日午後3時45分、芳賀町祖母井

 18日に告示された芳賀町長選、町議選は共に無投票で幕を下ろした。3月31日告示の県議選の芳賀郡選挙区に続き、町は統一地方選の三つの選挙で一度も投票機会がない「トリプル無投票」の事態に。有権者からは「残念だ」「町の課題を浮き彫りにするためにも選挙は必要」との声が聞かれた。識者からは「無投票当選は、民主主義が機能不全に陥る第一歩。新町長はオープンな議論を」との指摘がある。

 町長選の立候補届け出が締め切られた18日午後5時。町役場前の掲示場に張られた候補者のポスターは1枚のみだった。大関一雄(おおぜきかずお)氏(62)の当選が決まり、近くの選挙事務所では30分後、万歳の歓声が上がった。

 大関氏は三つの選挙が無投票だったことについて「町民は選挙で選ぶ権利があり、選挙が行われなかったというのは非常に残念だった」と話す。

 町議選は定数14に対し、立候補は12人。2011年の町議選も定数割れだった。今回は現職14人のうち半数の7人が引退した。副議長で立候補を見送った大根田周平(おおねたしゅうへい)さん(74)は「高齢なので身を引くと決めていた。若い人に託したかったが誰もいなかった」とし、担い手不足の現状を明かす。

 平成以降の町長選、町議選をひもとくと、投票率は7~9割台。選挙戦になれば多くの町民が一票を投じ、民意を示してきた。

 町の活性化を目指し活動する「はがめぐ」代表の鉢村絵美(はちむらえみ)さん(42)は「この人なら任せられると思う方を選挙で選びたかった。『意見を届ければ変わる』と思えるようになれば、立候補者が少ない状況が変わるのではないか」と語る。

 元公務員の男性(85)は「町の発展や未来に意思表明できるチャンスがなくなった」と無投票を残念がる。自営業手伝いの女性(75)は「これだけ選挙がないと戸惑う。人口減少や空き家問題にどう取り組むのか考えを聞きたかった」。

 宇都宮大の三田妃路佳(みたひろか)准教授(政治学)は「考えを代弁する人を選べないのは民主主義の危機だ。町政運営の争点を知る機会がなく、政治への無関心が加速する可能性もある。新町長や新町議はオープンな議論や報告を行い、関心を持たれる工夫が必要だ」と強調した。

© 株式会社下野新聞社