<金口木舌>保守の逸脱

 横浜港に“ドン”として君臨する藤木幸夫さんのカジノ阻止の闘いを描いた映画「ハマのドン」(松原文枝監督)を見た。横浜市が進める山下埠頭へのカジノ誘致に反対し、市や国に反旗を翻した藤木さんは自民党員で保守政界の重鎮

▼闘いの相手はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)を推進する神奈川選出の菅義偉首相。藤木さんは菅氏の育ての親であった。袂(たもと)を分かった2人が対立する構図も注目された2021年8月の市長選は藤木さんが推す候補が圧勝した

▼1930年生まれで戦争を生き、辛苦をなめてきた。映画ではこんな言葉も。「この地で汗と血を流して死んでいった人がいっぱいいる」。ハマへの思いがこもる

▼故郷の土地や文化、歴史、伝統と結びつくのが保守政治とされる。藤木さんは闘いの中で保守の軌道逸脱をただしたのだろうか

▼2015年9月の辺野古新基地の協議で、菅氏はこんな言葉を発した。「戦後生まれなので沖縄の歴史は分からない。日米合意が私の全てだ」。菅氏の保守政治は何と結びついているのだろう。

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