クレイグ・ブリーンの死亡事故、木製の柵が窓から侵入。アビテブール代表が当時の状況を報告

 2023年4月13日(木)、アイルランド出身のWRC世界選手権ドライバー、クレイグ・ブリーンがテスト中のアクシデントによって命を落とした。享年33。悲運の事故から約1週間後の19日(水)、彼の所属チームであるヒョンデ・モータースポーツ(ヒョンデ・シェル・モビスWRT)のボス、シリル・アビテブールのコメントとして同組織から声明が発表され、アクシデントの状況が明らかにされた。

 2023年シーズン、昨季在籍したMスポーツ・フォードWRTを離れ古巣であるヒョンデに復帰し、チーム3台目のマシンを僚友ダニ・ソルドとシェアする“パートタイム・ドライバー”としてWRCに参戦していたブリーン。彼は4月20~23日にクロアチアで行われる今季第4戦『クロアチア・ラリー』に出場するため、先週現地でプレイベントテストに参加したが、このとき発生したアクシデントによって帰らぬ人となった。

 首都ザグレブから19日(水)に発信された声明によると、WRCで通算82戦を戦い計9度の表彰台を獲得した男はこの前日に埋葬された。それは関係者全員にとって非常に感情的になる時間だったという。

 アビテブール代表は声明の中で「感情はまだ生々しく、チームメイトとして、ライバルとして、信じられないほど素晴らしい存在であったクレイグに対する悲しみは、驚くほど溢れている」と述べた。

 事故については、「クレイグはクロアチアでのプレイベントテストに参加していた。当時の路面状況はスリッパリーで(滑りやすく)、彼がドライブするクルマは比較的低速で道路から滑り落ち、(道路脇に設置されていた)木製のフェンスに接触した」と説明。彼は「このフェンスの柱がドライバー側の窓から(コクピット内)に侵入した」と続けた。

 チーム代表の報告によれば、事故の後、テストに用いられていたステージはすぐさま閉鎖され医療チームが現場に駆けつけた。その後ブリーンは病院に運ばれたが、判断できる限り、彼の死は瞬間的なものだったという。

 ヒョンデ・モータースポーツとFIA国際自動車連盟は、この事故のあらゆる側面を検証するために協力している。

 現在までに行われ調査によって判明している限りでは、車両、タイヤ、安全装置のどの要素にも問題は見つかっていない。また、地元警察は現場で報告書を作成した。

 初期の報道のとおり、この悲劇的な事故を経験したコドライバーのジェームス・フルトンは無傷であった。しかし、心的ショックは図り知れないことからヒョンデは全力で彼をケアしている。

ヒョンデ・モータースポーツのシリル・アビテブール代表

「ジェームズ・フルトンはクラッシュのなかで無傷だったことを述べなければならない。私たちの心は彼に向けられている。いまこの時、我々はジェームスをサポートするために、できる限りのことをしている」とアビテブール氏。

 彼はまた「この週末には、クレイグを追悼するさまざまな取り組みが行われる」と語った。

 ヒョンデはこの週末、クロアチア・ラリーに出場するティエリー・ヌービルとエサペッカ・ラッピのマシンに、ブリーンの人生や競争心を称える印として“アイリッシュ・カラー”の特別なリバリーを施すだけでなく、ホスピタリティ・ユニットには弔問者芳名録を用意するとしている。これは誰でも署名が可能なもので、後に遺族と共有される予定だ。

クレイグ・ブリーンの母国、アイルランドの国旗を象徴するグリーン、ホワイト、オレンジの特別カラーリングが施されたヒョンデi20 Nラリー1 2023年WRC第4戦クロアチア・ラリー
追悼カラーリングをまとったティエリー・ヌービルのマシン(手前)と、修復されたクレイグ・ブリーンのマシン(奥) 2023年WRC第4戦クロアチア・ラリー
WRC第4戦クロアチア・ラリーでは、大会公式ゼッケンの下部にブリーンを追悼するバナーが加わる
クレイグ・ブリーンを追悼する特別なカラーリングが施されたヒョンデi20 Nラリー1 2023年WRC第4戦クロアチア・ラリー

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