建築家 池田武邦さんしのぶ 一周忌コンサート 西海・邦久庵

池田さんをしのび開かれた一周忌追悼コンサート=西海市、邦久庵

 長崎県佐世保市のハウステンボス(HTB)を設計するなど日本を代表する建築家として知られた池田武邦さんの一周忌追悼コンサートが15日、池田さんがついのすみかとして西海市西彼町の大村湾のほとりに建てた旧宅「邦久庵(ほうきゅうあん)」であった。出席者はクラシック音楽の美しい音色に耳を傾けながら、在りし日をしのんだ。
 池田さんは神奈川県出身。日本初の超高層ビル「霞が関ビル」の設計に関わった。1967年、日本設計事務所(現日本設計)の創立に参加し、社長などを歴任。昨年5月15日、98歳で亡くなった。
 コンサートは長年、池田さんと親交があった佐世保玉屋会長夫人の田中丸栄子さんら有志と、同庵オーナーで英国の実業家ジョナサン・デンビーさんが共催。約40人が出席した。

会場の一角に安置された池田さんの写真や愛用の帽子など

 会場の一角には、池田さんの写真や愛用の帽子、太平洋戦争時に乗り組んだ軽巡洋艦「矢矧(やはぎ)」の模型などが置かれた。国内外で活躍するチェロ奏者の有泉芳史さんがプッチーニの「レクイエム」をはじめとするクラシックや、映画音楽などを披露した。
 池田さんは後年、「人間は自然の一部」と最先端技術による人工的な環境に疑問を抱き、設計思想を180度転換。HTBの設計に生かした。田中丸さんは「自然と共生する哲学や生き方を風化させず、後世にずっと継承したい」、デンビーさんは「とても素晴らしい場所。演奏も素晴らしかった」とそれぞれ振り返った。
 邦久庵は2001年、くぎを使わない伝統工法で建てられたかやぶきの家。池田さんは10年ほど過ごした。現在は地域のボランティアらでつくる「邦久庵倶楽部(くらぶ)」などが保存と活用に取り組んでいる。

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