社説:G7外相会合 温度差縮め結束固めよ

 長野県で行われていた先進7カ国(G7)外相会合が閉幕した。1カ月後のG7首脳会議(広島サミット)に向けて、課題の整理はできたのだろうか。

 共同声明では、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、世界のいかなる場所でも力や威圧で領域を変更する試みに反対すると強調した。

 そのうえで、ロシアのウクライナ侵略を非難し、無条件で即時撤退するよう求めた。

 核使用をちらつかせた威嚇は受け入れられず、ロシアへの武器供与を防止すると訴えた。必要とされる限り、ウクライナを支援する姿勢を示したのは、これまでの経緯から当然のことであろう。

 また、透明性を欠いた形で核戦力を急拡大している中国にも強い懸念を抱き、核管理や使用リスクの低減に関して米国と速やかに対話するよう求めた。

 G7関連の声明で、中国の核開発に言及したのは、極めて異例なことだという。中国外務省は「自衛のための核戦略だ」などと反発した。

 しかし、停滞している核軍縮の機運を高めるためには、こうしたまっとうな主張を、G7としてきちんとしておくのが大切だ。今回の会合の成果といえよう。

 ただ、各国の足並みがそろっているわけではなさそうだ。

 先日、訪中したフランスのマクロン大統領は、中国が武力統一を否定していない台湾問題について問われ、「欧州は単に米国に追従すべきではない」と答えた。

 これでは、アジアの問題に欧州は関与しないと宣言したようなものである。外相会合では、フランス側が釈明に追われる場面もあったとされる。

 米機密文書の流出問題では、米国による同盟国などへの通信傍受の様子が明るみに出た。各国に不信感が広がったのではないか。

 経済、軍事両面で存在感を増す中国に向き合うには、こうしたG7内での温度差やあつれきを、できる限り小さくして、結束を固めなければなるまい。

 来月の首脳会議で岸田文雄首相は、被爆地の地元広島で、核軍縮に向けて唱えた自らのプランを推進することに意欲をみせている。

 これは、一朝一夕に解決できるような問題ではない。アジアで唯一のG7参加国との立場を自覚して、新興・途上国にも目配りしながら、欧米との橋渡し役を務め、地域の平和と安全を少しでも確かなものとしてもらいたい。

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