「起訴されなくなるのを恐れた」滋賀県警の証拠に矛盾の調書 湖東記念病院の国賠償訴訟

大津地裁

 滋賀県東近江市の湖東記念病院での患者死亡を巡り、再審無罪が確定した元看護助手西山美香さん(43)=滋賀県彦根市=が、国と滋賀県に賠償を求めた訴訟の第7回口頭弁論が20日、大津地裁(池田聡介裁判長)であった。この中で、県警が再審公判段階で初めて検察に送致した証拠に、矛盾する内容がある西山さんの供述調書が含まれていたことが明らかになった。西山さん側は、捜査段階では県警が不起訴になることを恐れてこれらの供述調書をあえて送致しなかった、と指摘した。

 県警から検察への捜査資料の送致記録リストを国側が開示したことにより、再審公判が開かれる前の2019年7月、矛盾する複数の供述調書が県警から検察に送られていたことが判明した。西山さんの精神状態を確認するために医師や出身中学の教諭らから事情聴取していたことも分かったという。

 西山さん側は、当初は再審公判で有罪立証する方針だった検察側が、これらの証拠によって有罪立証を断念したと指摘。県警が捜査段階で送致しなかったことは、「検察官に供述の信用性に疑問を抱かれ、起訴されなくなることを恐れたと考えるのが合理的」と主張した。今後、リストに基づいて証拠そのものの開示を求める。

 県側は新たな書面を陳述し、西山さんが起訴された後の余罪捜査は公判まで自白を維持する目的だった、とする原告側の主張を否定した。西山さん側はこれに再反論し、余罪の取り調べ状況報告書が提出されないことへの説明を求めた。

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