ダニール・クビアト、ランボルギーニ入りは「タイミングが完璧。簡単な交渉だった」と語る

 ランボルギーニLMDhのファクトリードライバーに選出されたダニール・クビアト。彼は今回の抜擢に「感謝」していると語り、ランボルギーニから声がかかるまではレースキャリアに一区切りつけることも考えていた、と示唆した。

 クビアトは4月13日、すでに発表されていたミルコ・ボルトロッティ、アンドレア・カルダレッリ、ロマン・グロージャンに加わる形で、2024年にランボルギーニが投入する新型LMDh車両のファクトリードライバーとなることが明らかにされた

 28歳のクビアトは、シャシーパートナーのリジェとのテストおよび開発に携わり、2024年にLMDhファクトリーチームのアイアン・リンクスが参戦するWEC世界耐久選手権およびIMSAミシュラン・エンデュランス・カップのプログラムに関わることになる。

 クビアトは今季、すでにプロトタイプレースへの第一歩を踏み出しており、WECのLMP2クラスに、アイアン・リンクスのパートナーチームであるプレマ・レーシングより、ボルトロッティ、ドリアーヌ・ピンとともに参戦しており、デビュー戦となる3月のセブリング1000マイルレースでは、3位表彰台を獲得している。

「セブリングでは、とても楽しめた」とクビアトは語った。

「僕にとって、初めてのレースだ。レース中ずっと優勝と表彰台を争っていた。とてもよかったよ。みんなは素晴らしい仕事をしてくれた」

「ここにはとてもプロフェッショナルな人たちがいる。間違いなく楽しんでいるよ」

「最近、あまりレースをしていなかったので、また勝てるようになるのはいいことだ。表彰台に戻ることができたのは、本当にクールな気分だった」

セブリングのWEC開幕戦では、ミルコ・ボルトロッティ、ドリアーヌ・ピンとともにクラス3位表彰台を獲得したダニール・クビアト

 クビアトはレッドブル・レーシングを中心に、シングルシーター最高峰のF1世界選手権で6シーズンを過ごし、計110グランプリに出場した。また、レッドブルのサテライトチームであるトロ・ロッソとアルファタウリに所属していたが、2020年シーズン終了後、角田裕毅がレースドライバーとなったことで降板した後は、アルピーヌのリザーブドライバーを務めていた。

 F1からの引退後、スポーツカーレースはクビアトのレーシングキャリアに新たな息吹を与えている。

「結局のところ、そこにはF1があり、それはモータースポーツの頂点だ」と、クビアトはF1からの撤退について語った。

「しばらくはアルピーヌのリザーブドライバーとして、他のシリーズに近いところで関わっていた。でも、結局はうまくいかなかったんだ」

「そうであれば、常に周囲を見る必要がある。僕は他の多くのチャンピオンシップの、多くの人々と話をしてきた。自分が最も必要とされ、最も意味のある最高のチャンスはどこなのか、常に考える必要がある」

「タイミングはとても重要だ。その時はとてもいい感じだった。自分にとって困難な時期もあったけどね」

「僕は自分自身に正直でなければならない。今日に至るまで、僕は自分のキャリアを終えることを考えるのに、そう遠くないところにいた。僕を信じてくれたランボルギーニに感謝している。それはとてもクールな場所だ」

ランボルギーニのファクトリードライバーとなったダニール・クビアト

 クビアトはさらに、大きなチャンスに恵まれなかったことが、このスポーツにおける自分の将来に疑問を抱かせることになったことを認めている。

「引退とまではいかないけど、(レース活動は)何もなかったからね」とクビアト。

「そうなると、『本当にうまくいかないな』と思うものだ。でも、最後の最後にチャンスを得て、うまくいったんだ」

 彼がスポーツカーレースに惹き込まれた大きな理由のひとつは、多くの新しいメーカーがプロトタイプカテゴリーに参入してきたことだという。

「それは、世界でもトップクラスのカテゴリーのひとつだ」とクビアト。

「特に、もう数え切れないほど多くの自動車メーカーが参入してきたことで、非常に魅力的なチャンピオンシップになった。F1に次ぐ、最大のブームだと思う」

 クビアトは以前、2022年のシリーズに参加しようと試み、Gドライブ・レーシングのLMP2チームと契約した。しかし、ロシアのウクライナ侵攻や各国政府、FIAからの制裁を受け、ロマン・ルシノフ率いるチームはチャンピオンシップから離脱することとなった。

「LMP2に近づいたら、次の目標はそのカテゴリーのトップ、つまりハイパーカーに行くことだ」とクビアトは説明する。

「それが当初からの目標だった。しかし、ときに物事は間違った方向に進んでしまうもので、(2022年は)そのような結果になってしまったんだ」

「ランボルギーニはLMDhプロジェクトのために、速くて経験豊富なドライバーを探していたから、タイミングは完璧だったんだ」

「すべてがうまくいった。最初からとても簡単な交渉だった。彼らとともにすべてについて話をして、すべてが納得できたんだ」

クビアトが2023年のWEC世界耐久選手権で走らせてるプレマ・レーシングの63号車オレカ07・ギブソン

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