【由布】「近くにスーパーがない」「店までの交通手段が不便」といった買い物弱者を支援する取り組みが由布市で始まった。市はイオン九州(福岡市)と連携し、今月から庄内町の市役所本庁舎で無人店舗販売の実証実験を実施。イオン九州は20日から、同町大津留地区で移動販売車の巡回訪問をスタートした。
無人店舗販売の実証実験は、地域の拠点施設に店を置くことで買い物支援策になるかなどを検証する。同社が展開する無人店舗サービス「スマートNICO」を活用。公共施設で同サービスを提供するのは県内で初めてという。期間は6月2日まで。
本庁舎1階の市民ホールに商品棚(約5平方メートル)を設置。パンやカップ麺、菓子、飲料などを販売している。支払いはセルフレジでキャッシュレス決済となる。スマートフォン決済アプリのPayPay(ペイペイ)や交通系ICカードなどが利用できる。
商品の在庫管理や補充は同社が担う。犯罪やいたずら防止のため防犯カメラを設置している。
市は今後、利用者を対象にアンケートをする予定。地域課題解決に取り組む市内の「まちづくり協議会」の関係者にも見学を促している。
市総合政策課によると、地域の困り事として「買い物が不便」の声が多く寄せられており、喫緊の課題となっている。同課は「地域で安心して暮らしていくため、課題解決の手段にならないか探りたい」と話す。
市と同社は2011年に地域貢献連携協定を締結している。
■イオン九州巡回、初の取り組み
移動販売は、イオン九州初の取り組み。生鮮品や総菜、日用雑貨など約400品目を積んだ車が、庄内町大津留地区を継続的に巡回する。2ルートに分け、それぞれ週に2回、計20カ所を訪問。1カ所につき20分程度停車して販売する。
価格はイオン挾間店の店頭価格と同じだが、手数料が1商品につき10円かかる。支払いは、現金やクレジットカード、電子マネーが利用できる。接客は同店の従業員が担う。
20日に、東大津留のおおつる交流センターで出発式があった。関係者ら約30人が出席。同社の岩下良上席執行役員が「ネットスーパーもあるが、商品を目で見て、店員と話をして買い物を楽しみたいという声がある。移動販売によって地域住民の生活がより便利になるようにしたい」とあいさつした。
果物などを購入した大津留まちづくり協議会の安部元生会長(74)は「高齢者が増えている地域なので、すぐ近くに来てくれるのはありがたい。品ぞろえも豊富」と喜んだ。