佐世保市長選情勢 「基地の街」振興巡り論戦 3新人、無党派層取り込みも鍵

佐世保市長選の街頭演説に耳を傾ける市民=同市内

 佐世保市長選は23日の投開票まで残り2日。無所属新人3人が論戦を繰り広げている。だが、注目の子育て支援などで大きな違いはなく、懸案の石木ダム建設はいずれも「推進」。争点がかすむ中、防衛施設を抱える「基地の街」の振興を巡る舌戦が熱を帯びている。自民県連推薦の前市議、橋之口裕太候補(39)は政権与党の下で政策を推進できると訴え、前県議の宮島大典候補(59)は衆院議員時代の経歴や知事との連携を武器に応戦。ただ、両候補とも保守系で“防衛票”の流れは読みにくく、無党派層を取り込めるかも勝負の鍵となりそうだ。
 海上自衛隊や米海軍の艦船がひしめく佐世保港。ほど近い島瀬公園で19日、自民県連が市長選と市議選で公認・推薦した候補を激励する集会があった。橋之口候補は演説の序盤に拳を握りこう叫んだ。「安全保障を含め、国の基盤を担う市民の誇りを確認する戦いだ」。
 集会に参加した自衛隊OBの市議候補は「橋之口候補とは選挙で協力できる」と共闘の構え。告示日には元防衛副大臣が応援に駆け付け、政権与党とのパイプを印象付けた。
 一方、宮島候補も、個人演説会などで基地政策を語る。衆院議員時代に防衛大臣政務官を務め、「国政で培った経験や人脈を生かせる」と主張。現市政で進展しなかった佐世保弾薬補給所(前畑弾薬庫)の移転・返還に意欲を示す。
 16日の出陣式では、大石賢吾知事が応援演説。県は今春、基地の担当部署を新設しており、陣営は県市連携で課題に取り組めるとアピールする。
 佐世保市によると、市内にある自衛隊基地には約7700人が勤務。橋之口、宮島両陣営とも「自衛隊や防衛関連企業は保守層が多い。大きな票田になる」との認識で一致する。
 ただ、今回の市長選は橋之口候補だけでなく、もともと自民だった宮島候補も「保守系」を自負。自民系の一部議員や有力団体が支えており、保守分裂の様相を呈している。両陣営とも「防衛票がどのように流れるのか読みにくい」としており、無党派層への浸透も同時に進めている。
 こうした浮動票へのアプローチは、元大学助手の田中隆治候補(79)も注力。地域経済の活性化を公約に掲げ、市内各地を巡りながら支持を求める。
 無党派層を多く取り込むためには投票率の向上が不可欠で、各陣営とも「まずは選挙に行って」と有権者に呼びかける。現職と新人の2人が争った前回の投票率は戦後最低の50.11%。今回は4期務めた朝長則男氏(74)が退任し、16年ぶりに新たなリーダーが誕生する。ある陣営は「前回よりは関心は高い。55%は超えるのではないか」と予想する。

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