失明して出合ったゴールボールで世界へ 東京五輪転機に競技の輪広げ

練習会でも人一倍機敏な動きを披露する西村さん(守山市播磨田町・守山市民交流センター)

 滋賀県ゴールボール協会会長の西村秀樹さん(61)は、先天性の緑内障で小学校時代に片目が見えなくなり、27歳のときに失明した。

 グランドソフトボール(盲人野球)で全国大会を制した経験から、30歳の時に先輩から日本で初めて東京と京都でゴールボールの講習会があることを聞いた。ゴールボールは、目隠しを着けた3人1チームで鈴の入ったボールを投げ合い、得点を競う。

 「これは面白い。(日本だけの)盲人野球と違って世界をねらえる」と競技にのめり込んだ。1994年に北京で開かれたフェスピック(現在のアジアパラリンピック)の日本代表になった。しかし戦術、テクニックなどすべての面で圧倒されて4位。メダルに届かなかった。

 当時、国際大会への出場は自己負担も多く、代表を経験して競技を離れていくメンバーもあった。厳しい時期が続いたが、転機となったのは東京五輪。2016年に地元守山市がパラリンピックの参加国を受け入れるホストタウンに登録された。自らも競技の普及に尽力し、18年から市内の小中学校で福祉体験の授業として講師をつとめた。22年度には市内すべての小中学校を回っていた。

 「ゴールボールを知ってくれるのはもとより、僕ら視覚障害者は声がないと誰かわからない。それを説明すると、子どもらがみんなあいさつしてくれるのがうれしい」
 守山市以外でも、5月には近江八幡市、夏には大津市、野洲市などで講習会を予定している。次なる『ゴール』は25年に県内開催される全国障害者スポーツ大会。ゴールボールはオープン競技になっている。

 「今回の大会では視覚障害者でなくても参加できる。健常者の方もアイシェードを着けて競技を楽しめるんです」

 視覚障害者の安全を確保するため、プレーヤーだけでなく審判などの養成も急務という。障害者と健常者が手を携えて競技の輪を広げていく。守山市洲本町。

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