社説:スーダン内戦 邦人退避へ手を尽くせ

 アフリカ北東部スーダンで正規軍と準軍事組織の対立による内戦が起こり、在留邦人63人の安全が危ぶまれている。

 邦人の退避準備のため、浜田靖一防衛相はきのう、航空自衛隊の輸送機を隣国ジブチに派遣するよう命令した。

 国連の仲介などによる停戦合意は機能しておらず、戦闘の長期化が懸念される。

 航空会社は運航を停止し、陸路での国外脱出も困難とされる。邦人の保護が急務だ。

 政府は現地の安全状況を慎重に見極めながら、退避に手を尽くす必要がある。

 戦闘は軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の主導権争いが原因とみられる。軍は2021年にクーデターで実権を把握。民政移管に向けた協議の中で、RSFの軍への統合を巡り対立が深まり、15日から戦闘となった。

 世界保健機関(WHO)によると、これまでに270人が死亡、2600人以上が負傷した。

 水や食料が不足し、頻繁に停電するという。現地からは「経験したことのない爆撃や砲撃の音が鳴り響いている」と伝えられる。

 邦人保護が目的の自衛隊機派遣は6回目で、自衛隊法を改正してからは初めてとなる。

 21年のアフガニスタン情勢悪化の際には派遣が遅れて批判を浴びた。自衛隊法を改正して、邦人輸送の条件を緩和した。

 従来は「安全に実施」できる場合のみとしていたのを、防衛相が外相と協議し、危険回避の対策を講じることを要件に可能とした。

 ただ今回、スーダンの首都ハルツームの国際空港周辺も激しい戦闘に巻き込まれている。現地入りできるかは不透明だ。

 停戦の機を見はかり、空港の利用や退避者の輸送で安全を最優先にせねばならない。同様に自国民保護に当たる各国とも協力して取り組みたい。

 法改正で、大使館などで日本人と働く現地職員らも輸送できるようになった。人道的な見地から、救出の機会には対象を広げることも考えたい。

 スーダンはロシアの影響力が強く、ウクライナ侵攻に関わる民間軍事会社ワグネルの部隊が活動している情報もあるという。内戦の鎮静化は容易ではない。

 エジプトのシシ大統領が、対立する両者を仲裁する用意があると表明。アフリカ連合(AU)も調停に乗り出す考えを示している。

 日本も連携し、状況把握や停戦実現に努めてほしい。

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