佐藤琢磨の走りにチップ・ガナッシ内も興味津々「僕もディクソンがコクピットで何をしているか見てみたい」

 インディ500のオープンテスト2日目は大方の予想通り雨となり、テスト開始時間10時の前にキャンセルが発表となった。

 朝方から雨が降り続き、予報では雨が止みそうで路面が乾く可能性もなくはなかったが、先週末にロングビーチのレースを終えたばかりでもあり、すぐに来週末にアラバマのレースが控えていて、タイトなスケジュールもその一因だったであろう。

 このキャンセルを人一倍悔しがっていたのがチップ・ガナッシ・レーシングに移籍したばかりの佐藤琢磨だった。

 テスト初日は総合5番手で終えたものの、全体の周回数では80周余りしか走行できず、今日のテストではさらにクルマの理解を深めたいとタイヤのセットも残し、2日目に備えていた。

「今日のキャンセルは本当に残念ですね。雨が止んで路面が乾くなら2時間でもいいから走りたかった。やりたいことはいっぱいあったので……」としきりと残念がった。
 

テスト初日を順調に終えるも走行数は少なかった佐藤琢磨

 
 今年はマシンをドライブする機会も減り、なおさらスーパースピードウェイを走れる貴重な機会を1日失ってしまった。次にIMSを走るのは5月になってからだ。

「初日はエアロのバランスを中心にやりましたけど、やりたいことの80%位はできたと思います。チームメイトの他の3台も大体同じくらいの進み具合だと思います」

「僕もチームメイトの3台がどんなことをやっているかわかってますし、他の3台も僕が何をしているかわかっています。そこはお互いにできる協力はしていますけど、なんだかみんな僕に興味津々というか(笑)」

「まあ他所のチームから来たドライバーだし、今まではライバルだったわけで、サトウがどんな事をするんだろうって思ってるみたいですね(笑)。僕もチップ・ガナッシはどんな事してるんだろう?って思ってたわけですから、お互い様なんですが(笑)」

 チームとはお互いに探り合いながらでも、そのチーム内の化学反応はより相乗効果は生み出しそうだ。
 

入念にエンジニアと話す佐藤琢磨

 
「僕がエンジニアリングのミーティングルームに入っていったら、どのエンジニアもドライバーも僕のオンボードカメラをずっと見てるんですよ。おいおい、みんなどーした??って(笑)」

「どのドライバーもエンジニアも僕がコクピットの中で何やってるか知りたかった見たい(笑)。特にダリオ(フランキッティ)が、すんごい顔してずっとモニター見てました(笑)。ダリオとは2012年のファイナルラップでやり合いましたけど、興味あったんだしょうね」

「僕は比較的コクピットの中でいろいろ触る(アジャストする)方だから。それを言ったら僕もディクソン(スコット)がコクピットで何をしているか見てみたいですもんね」

 チップ・ガナッシの懐に飛び込みながらも、チーム内の相乗効果でガナッシのクルマがより進化する気配だ。

 ではチーム外の本当のライバルたちの様子を、琢磨はどう見たのだろうか?

「初日だけではまだわかりませんけどね。シボレー勢は特に。タイム的に上位には来なかったけどマクラーレンは何かまだ隠してるでしょうね。前戦のテキサスであれだけ速かったし台数も増えてますから」

「テキサスのポールポジションは僕ら陣営からも、ちょっと驚きました。ペンスキーで速かったのはジョゼフ・ニューガーデンでしたけど、これはトゥを使ったスピードだと思うので、まだ未知数」

「アンドレッティ・オートスポートは何をやってくるか大体わかってますけど(笑)。油断は禁物。カイル(カークウッド)もトゥを使って速いスピード出してますね」と話す。

 5月に向けて少し宿題を残した形で琢磨のインディオープンテストは終わった。わずか1日、6時間30分の走行だけで終わってしまったが、琢磨の話でチームの中で、舞台裏ではどれほどインディ500に向けての準備が進み、そこにかける熱い思い入れが感じ取れた。インディ500まであと1カ月余りだ。
 

マシンに乗り込む佐藤琢磨

© 株式会社三栄