不登校だった幼少期、順風満帆の陰で悩み抜いた実演販売時代、落語との運命的な出会い、師匠の教えと妻の支え、大切な家族。泣いて笑って心に沁みる、大人気落語家、初の自叙伝『噺家 人嫌い』が4月21日に扶桑社より発売された。 『笑点』で共演している春風亭昇太からも「面白いのは落語だけにしてくれよ! これは桂宮治の設計図だ!」と絶賛の一冊だ。
写真:武藤奈緒美
えー、一席おつきあいを願っておきますが……。
落語のほうは、相も変わらずそそっかしい人が出てまいります。そそっかしい人のことを「粗忽者(そこつもの)」なんて言いますが、昔でいう江戸、いまの東京というところに、肉屋の倅がおりました。
これがその粗忽者で、大層そそっかしい。そそっかしいだけじゃあない。跡取りの長男坊とあって、家族一同から甘やかされたせいか、大変な人見知り。「人に会いたくない」と保育園にも小学校にも行かない。いわゆる“不登校”というやつで……。
たまに母親に引きずられるようにして教室に行くってぇと、後ろの隅のほうでグズグズ、メソメソ。でもまぁ、小一時間もすると、そんなことはケロッと忘れてしまい、友達とパアパア、パアパア明るく話せる。気がつけば、クラスの中心になって悪ふざけをしている。そんな子だったんだぁそうです。
この粗忽者、名を利之と言いました。
──本書 まえがきより一部抜粋
写真:武藤奈緒美
2022年1月に『笑点』メンバーに抜擢された桂宮治。独演会はつねに満席、メディアにも引っ張りだこでレギュラー多数。“令和の爆笑王”と称される、いまもっとも旬な落語家だ。 高座やメディアでは笑顔が代名詞の桂宮治だが、じつは大の人嫌い。 「他人と関わるのがイヤ」と公言し、つねに疑心暗鬼に陥る性分は、普段の姿からは想像がつかない。 「光のあるところには影があるでしょ。世の中ぜんぶそうですよ」という宮治。 人が大嫌いなのに、人を笑顔にさせるギャップに注目が集まること必至。笑いあり、涙あり、人嫌いありの人生。師匠と妻と家族を愛し、たくさんの人との出会いに助けられてガムシャラに生きてきた噺家の姿がここに。 落語ファンだけでなく、多くの方の心に沁みる一冊だ。