「初めて“普通の状態”で走れた」SFL王者・小高一斗が予選上位進出。不安要素解消で、台風の目に?【第3戦鈴鹿】

 2022年に太田格之進らを下し全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権(SFL)のタイトルを獲得、満を持して最高峰フォーミュラのレギュラーシートをつかんだ小高一斗。2021年、代役参戦でSF経験を積んでいたこともあり、純粋なルーキーたちよりも経験値の高い、いわば“準ルーキー”として周囲からの期待も高い状態で、初のレギュラー参戦シーズンを迎えていた。

 しかも、担当エンジニアはかつて山本尚貴とともにタイトルを獲得した阿部和也氏。フル参戦初年度とはいえ、言い訳のできない環境に置かれることとなった。

 しかし、開幕ラウンドとなった富士の1・2戦では、思わぬつまづきを見せてしまう。チームメイトの山下健太が“復活の表彰台”を獲得した一方で、謎の低迷。昨年まで山下の3号車を担当、今季より小高と組む阿部エンジニアも、鈴鹿の搬入日の時点では「遅いのがなぜなのか分からないですし、クルマが曲がらない理由もよく分からない。これだけやってダメだと、さすがにもう何か(クルマが)変なのではないか」と首を捻り、この週末への不安も口にしていた。

 また、近藤真彦監督も山下の表彰台を喜ぶ一方で、「小高の良さを引き出してあげないといけない」と、4号車陣営を気にかけていた。

 その不安やモヤモヤは、鈴鹿での90分間の土曜フリー走行がスタートすると、すぐに晴れた。

 小高いわく、富士の件は「ある意味、トラブルのようなもの」とのことで、チームが今回、ハード側で対策・見直しを講じてきた部分が、しっかりと効いていたようだ。

「やっと初めて、“普通の状態”で走れました」と、予選日を振り返る小高の表情も晴れやかだ。

「ここでのシェイクダウン(3月上旬)のときから、なぜかいまいち自分たちは良くなくて、その原因であろう部分がこの前の富士で分かったので、そこをしっかりと直してもらって、良い状態に持ってくることができました」

「走り出しから、富士とは全然違うフィーリングを得られていましたし、予選も自信を持ってアタックできたかなと思います」

 Q2では、PPの大湯都史樹(TGM Grand Prix)からはコンマ6秒離されての6番手。しかし、ポテンシャルが反映されたギャップではなかったようだ。

「Q2は正直、もうちょっといけたなと思います。ウォームアップの部分であったり……あと最後シケインでロックしてしまったりと、まとめきれなかった部分があるので、ちょっと悔しいですね」

 コンマ3秒弱の4番手には山下もつけており、小高がアタックをまとめきれていれば、KONDO RACINGとして2台が同等の速さを発揮できていたかもしれない。

「シーズン前、近藤監督とも『最低毎回、ふたりでQ2に進出しよう。強いチームになろう』と話していました」と小高。

「今回は(2台とも)3列目以内からスタートが切れるので、よかったです。1台だけ速くてもデータの共有は難しいですが、今回はフリー走行から2台ともいいところにいられたので、予選に向けてもうひとつレベルを上げられたのかなと思います」

 決勝に向けては、「鈴鹿は結構ロングランでタイヤがたれるイメージも、テストだったり今朝のフリー走行でもありますが、富士の決勝の最後のペースはそこまで悪くなかったですし、そのデータをもとに、セットや走り方を突き詰めていければと思います」と前向きに語った。

小高一斗(KONDO RACING)と阿部和也エンジニア

■阿部和也エンジニアも“トンネル脱出”

 予選後、阿部エンジニアは「とにかくドライバーが頑張ってくれたと思います」と小高の走りを讃えた。

「Q1をクリアするのもなかなか厳しいいまのメンツの中で、よく残ったと思いますし、そこからQ2に向けて意外と(全体の)タイムが上がるなか、コンマ5秒くらい上げられたし、(まとめきれていれば)そこからまだコンマ2、3秒は上がる余地があった。そうしたら3〜4番手を争える位置だったわけですし、正直(予選のパフォーマンスは)充分かなと思います」と阿部エンジニア。

 クルマについて「だいぶ改善しました。“普通”になりました」と、阿部氏は小高と同様の感触を口にする。

「1カ所ではなく、いろいろと見直してきたので、そこに関してはだいぶまともになりました。今日のクルマはもう、“至って普通”。この状態だったら『いま、ここをいじった方がいいな』とか『ここはもう触らなくて大丈夫』というのがだいぶ把握できます。ここ3年くらいは、あまりそういうこともなかったので……ようやく普通になったな、という感じですね」

 阿部エンジニアとしても、山下とともに“長いトンネル”を走ってきただけに、今回の小高の予選のパフォーマンスに、安堵の表情を浮かべていたのが印象的だった。

 決勝に関しては阿部エンジニアとしても未知数だというが、「ちょっとまだ、ロングランでどうなるかは分からないですが、最低限の“普通のこと”をやってみようと思います」と正統派のアプローチで臨む構えだ。

「いまは『ダメだからガラっと変えなければ』みたいな雰囲気はないです。とりあえずこのまま普通に(決勝向けのセットを)やってみて、『それでダメだったらまた次を考えよう』というところまで、ようやく来られた感じです」

 “スタート地点”に立ったKONDO RACINGと小高陣営。上位に切れ込む存在となれるかどうか、まずは第3戦決勝での走りに注目だ。

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