「内圧上昇が止まらない」「セクター1の遅さが課題」「アウトなのかな?」【SF Mix Voices 第3戦予選(2)】

 全日本スーパーフォーミュラ選手権は4月22日、三重県の鈴鹿サーキットで2023年第3戦の予選が行われ、大湯都史樹(TGM Grand Prix)がポールポジションを奪った。

 悲喜こもごもの予選の裏では、いったい何が起きていたのか。前編に引き続き、ここでは第3戦鈴鹿予選終了後の取材セッション“ミックスゾーン”より、ドライバーのコメントの後編をお届けしよう。

■リアム・ローソン(TEAM MUGEN)予選8番手
 ダブルヘッダーとなった富士大会の第1戦で、鮮烈なデビューウィンを飾ったローソン。今回の鈴鹿でも、朝から順調に周回を重ね、フリー走行ではトップから0.387秒差の10番手と悪くない位置につけた。

「フリー走行の段階からクルマのバランスは悪くなくて、だいたいのことが想定の範囲内だった」とローソン。

 Q1・Aグループでも1分36秒933で3番手通過を果たし、今回も上位グリッドが期待されたが、周りがQ2で1秒近くタイムを縮めている中、彼は1分36秒711と、0.2秒しかタイムが上がらなかった。

 原因についてローソンは「大きなミスをしてしまった」と説明。「Q2のアタックに入る時に、大きくマシンをスライドさせてしまい、タイムをロスした。このタイヤの(ピークが出るところの)ウインドウをつかみ切ることができなかったのかもしれない」と悔しそうな表情で話した。

 実際、『SFgo』アプリで彼のQ2アタックを確認すると、前周の日立Astemoシケインを立ち上がって最終コーナーで加速するところで、リヤが大きくスライドし、若干の失速が見られた。この影響で、セクター1は通常よりも0.5秒ほどロスしてしまっており、それがなければ4~5番手あたりに食い込めていた計算だ。

「クルマのバランスがうまく行っていただけに、そのミスだけが心残りだ」とローソン。それでも、気持ちを切り替えて決勝に向けて前向きに語ろうとするも、不安要素が多いというのが現状の様子だ。

「富士でのロングランペースは良かったけど、ここはオーバーテイクが難しいコースから、富士のようにはいかないと思う。今日から明日にかけて、できることはトライしたいと思っている」

「もちろん表彰台を狙っていくし、戦略も含めて全てうまくいけば、可能性は見えてくると思う。だけど、現状では富士よりタフな感じになるかもしれない」

■大嶋和也(docomo business ROOKIE)予選18番手

 第1戦富士で9位に入り、久しぶりのポイント獲得となった大嶋。第2戦では11位と入賞まであと1つというところでレースを終えていただけに、第3戦鈴鹿は「少し期待して週末を迎えた」という。

「ただ、(公式練習の)走り始めからクルマのバランスが悪く、それを合わせこむのにだいぶ時間かかりましたね。常にオーバーステアが強くて、似たようなセットで走っていた冬のテストのときはこんな感じではなかったです。前戦の富士でいろいろとセット変えて、『でも鈴鹿はやはりこっちだよね』と思って持ち込んだのですけど、気温とかの影響もあり、だいぶ変えてこなきゃいけなかったのかなと思いましたね」

 そうして迎えた公式予選Q1 A組セッション。大嶋はまず、計時上の2周目に1分38秒156をマークすると、翌周ピットインしタイヤを交換。計時上の5周目にふたたびアタックを敢行し、1分37秒615をマークするも11台中9番手となり、Q2進出には届かなかった。

 Q1での2アタック作戦という珍しい戦略については「使っても大丈夫な量(のタイヤ)があったので、試しにやってみようかなと」と大嶋。しかし、「さすがにバイク(JSB1000クラスのレース1)が走った後だと少し辛かったですね」と、口にしたように、路面のコンディションは大嶋の望んでいた状況ではなかった。

「僕もQ1はセットを変える時間すらないので、2アタックとも同じセットで行きましたけど、それでも0.5秒くらい上がりました。みんなQ1、Q2でどんどんタイムを上げていってますし、(ラバーコーティング含む)コンディションの影響は大きいと思いますね」

「かなり予想と違う結果となり悔しいですけど、なんとかもう少し気持ちよく走り、ポイント圏内まで追い上げたいです。何とかしたいと思っています。鈴鹿は富士よりもかなりタイヤのデグラデーション(性能劣化)が大きいと思いますから、ちゃんとしたセットを作ることができれば、チャンスは出てくると考えています」

 ただ、そんな大嶋も不安要素を抱える。

「(タイヤの)内圧上昇がぜんぜん止まらないので、レースは未知数ですね。走り始め(公式練習)も結構内圧高めで使ったのですけど、2周続けてオーバーランしてピットに入るくらいで。そこは少し不安ですね」

2023スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿 大嶋和也(docomo business ROOKIE)

■宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)予選12番手
 予選Q2では5番手タイムを記録した宮田だが、スプーンふたつ目の出口で、わずかながらトラックリミットを超えていたとのことで、該当ラップが抹消され、正式結果では12番手に下がることとなった。

「正直、車載で見ると『アウトなのかな?』という感じでしたけど、外からの映像での判断になると思うので『そうですか……』という感じです」と、落胆気味の宮田。朝のフリー走行から、総じて流れは良くなかったという。

「朝から、あまり調子は良くなかったです。フリー走行では、トラフィックもあって、うまくウォームアップできなかったところがありました。予選に関しては、Q2には普通にいけるかなと思っていましたけど、昨年よりは、あまりクルマ的には良くなかったし、伸び代が少し少ないなという感じで終わってしまった予選でした」

「朝のこと(トラフィック)を考えて、計測2周目でアタックに行くようにしたのですけど、それがちょっと良くなかったのか……。Q2ではトラックリミットでタイムを抹消されてしまいました」

 日曜日の決勝レースでは、中団グループから追い上げることとなる宮田。「タイヤがけっこう難しそうなので、(スティントを)伸ばしていかないといけないのかなと思いますけど、みんながどうするのか分からないです。みんながピットに入ってくれたら、チャンスがある感じです」と語った。

2023スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
2023スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)
2023スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿 ジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)

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