統一地方選 茨城、暮らし支援求め1票 物価高、切実な声

水戸市では市民会館が7月にオープンするなど新たな街づくりが進む=同市泉町

統一地方選後半戦の投開票が23日行われ、茨城県内各地で新しい市町村長や議員が決まった。物価高が続く中、子育て支援や人口減少対策、生活不安の解消など幅広い課題に注目が集まった今回の選挙戦。市長選が行われた水戸、日立、取手各市で1票を投じた有権者からは「税金は福祉充実に」「にぎわい創出を」など、暮らし支援や市街地活性化を求める声が上がった。

■水戸 「にぎわい創出」願う
8年ぶりの同顔対決となり、両候補が論戦を交わした水戸市長選。同市の大型事業「4大プロジェクト」で最後となる市民会館では7月の開館に向け、道路反対側の大型商業施設と結ぶ上空通路の建設工事が進んでいる。

開館後は著名アーティストのコンサート、水戸芸術館と連携した舞台や展示会のほか、12月にはG7サミット内務・安全担当大臣会合が予定される市民会館。投票を済ませた会社員の40代男性は「面白そうな催しがあったら行きたい。中心市街地へ遊びに行くきっかけになるのでは」との見方を示し、市街地の新たなにぎわい創出を願った。

設計士の井坂陽子さん(50)は、同館周辺のまちづくりについても言及。「歩きながら買い物が楽しめるような場所が欲しい」と注文を付けた。住みやすさを巡る都市間競争が加速する中、運転免許証を返納した高齢者やマイカーを持たない人などへの支援として「公共交通機関をもっと整備して」と期待を寄せた。

市街地の再興を望む声が上がる一方、同館を含む大型公共事業の推進に懐疑的な見方も。期日前投票を済ませた無職の70代男性は「(同館は)慌てて造る必要が果たしてあったのか」と首をひねり、孫2人の存在を念頭に「限りある税金は福祉の充実などに使って」と切実な声を上げた。

選挙戦では、長期化が予測される物価高を背景に、子育て支援策についても関心が高まった。

市は本年度から、1カ月当たり4500円を徴収していた中学生の給食費を無償化。子育て世代の有権者の関心は、既に小学生の無償化が始まる時期へ移りつつある。

主婦の伊東みなみさん(29)は、小学生の給食費無償化について「すぐに始まればありがたい」と熱望。2人の子どもを育てる看護師の竹井有香さん(34)は「学費補助なども拡充を」と、いっそうの子育て支援策を求めた。

このほか、生活支援や若者向けの施策を望む声も多く、年金暮らしという70代男性は「生活インフラの料金補助を」と語り、20代男子学生は「県内で就職を望む人への支援など、もっと若者に目を向けてほしい」と要望した。

■日立 まちの課題深刻化
24年ぶりに選挙戦となった茨城県日立市。人口は過去10年で約2万人減り、大企業の事業再編で産業構造が大きく変わるなど、無投票が続く間にまちの課題はより深刻化してきた。

元会社員の60代男性は、久しぶりの市長選に強い関心を持って1票を投じた。長らく続いた無投票当選。いつしか行政は遠い存在となり「まちが停滞していると感じた」。今回は両候補者の主張を調べ、街頭演説にも足を運んだという。男性は「市民に身近な市政を」と切実な思いを寄せる。

企業城下町の同市では、行政出身の候補者を企業や労働界、与野党が一体で支援する構図が定着する。

自営業の20代男性は「大きな仕事は、政党や組織の支援がなければまとまらないのか」とやや諦め顔。演説会場には若者も少なかったといい、今後は「多様な候補者が出てくれば」と期待を寄せた。

■取手 再開発事業に期待
JR取手駅西口周辺の再開発が進んでいる茨城県取手市。同県の「南の玄関口」は2005年のつくばエクスプレス(TX)開業の影響を受け、21年度の駅利用者は05年度の約半数となる約2万1千人に落ち込んだ。

同駅西口では10年、大型商業施設が撤退。12年には食品スーパーや100円ショップなどが入居する大型ビル「リボンとりで」が開業したが、8階建てビルのうち6~8階は現在も空いたままだ。

投票した会社員の40代男性は、こうした現状に「若い世代が取手に住んでくれたり、人が集まったりしなければまちは活気がなくなる」と危機感を募らせる。

同駅西口の再開発事業では、27年度中にも新たな再開発ビルが完成する予定で、駅前のにぎわい創出が期待される。

男性は「再開発に期待したい」と願った。

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