映画監督の稲塚さん初講話 二重被爆・故山口彊さんの交流証言者 生前の姿や肉声を紹介

二重被爆者、山口彊さんの体験について講話する稲塚さん=長崎市、長崎原爆資料館

 被爆者の体験を語り継ぐ「家族・交流証言者」の定期講話が23日、長崎市平野町の長崎原爆資料館であり、広島、長崎で原爆に遭った二重被爆者、山口彊(つとむ)さん(2010年、93歳で死去)の交流証言者で東京の映画監督、稲塚秀孝さん(72)が初めて講話した。稲塚さんは山口さんに取材して3本の記録映画を制作しており、映像と肉声の両方で訴えたいと、昨年から交流証言者の養成プログラムに参加していた。
 三菱重工業長崎造船所の技師だった山口さんは1945年8月6日、派遣先の広島で被爆。戻った長崎で同9日に再び被爆した。晩年には語り部を始め、国内外で精力的に講演をした。稲塚さんは2004年に山口さんの取材を開始。06年に記録映画「二重被爆」を、山口さん死去後の11、19年に続編を公開した。
 稲塚さんはこの日、10人ほどが聴講する中で登壇。冒頭、19年の記録映画の一部を上映して山口さんの生前の姿や肉声を紹介。被爆体験と生涯、「人間の世界に核はいらない」と訴えていた言葉などを、丁寧に語り聞かせていた。
 6月までに残り2回の定期講話をした後、市内外の平和学習などに講師として派遣される予定。終了後の取材に「これから始まる、という感じ。子ども向けや英語版(の講話)も作りたい」と話した。
 この日はほかに、長崎市の被爆者、森田博滿さん(88)の交流証言者で北九州市八幡西区の馬込雅子さん(56)も初講話に臨んだ。

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