WECで活躍してきた“トップアマ”、ポール・ダラ・ラナが即時引退を表明。エントリーは他チームが引き継ぐ

 これまで長期にわたりWEC世界耐久選手権に参戦してきたLMGTEアマクラスのジェントルマンドライバー、ポール・ダラ・ラナが、レースキャリアにピリオドを打つことを明らかにした。

 57歳、カナダ籍のダラ・ラナは、WECで17回ものクラス優勝を果たすなど、もっとも成功したブロンズ・ドライバーのひとりに数えられる。4月24日にリリースされたアストンマーティン・レーシングの声明によれば、彼は「複数のビジネス上の関心にフル・フォーカスする」ために、ドライバーから即時引退するという。

 2023シーズンも『ノースウエストAMR』として98号車アストンマーティン・バンテージAMRでエントリーしているダラ・ラナだが、今週末の4月27〜29日にベルギーで行われるスパ・フランコルシャン6時間レースからは、98号車のエントリー枠がハート・オブ・レーシングチームへと引き継がれる予定だ。

 ダラ・ラナはアクシル・ジェフェリーズと、アストンマーティンのファクトリードライバーであるニッキー・ティームとともに2023シーズンをスタートさせ、第1戦セブリング1000マイル、そして第2戦ポルティマオ6時間に参戦した。

 彼はカナダのヘルスケア不動産会社であるノースウエストの代表として、ビジネスと両立させながら、これまで長きにわたってWECで活躍してきた。

 10年前にWECデビューを果たしたダラ・ラナは、ペドロ・ラミー、マティアス・ラウダとともに2017年のGTEアマのタイトルを獲得したほか、ランキング3位を2度獲得している。

 また、昨年はニッキ・ティーム、デビッド・ピタードとともにル・マン24時間レースで表彰台を獲得しているが、何度も頂点に近づいているにもかかわらず、ル・マンの優勝には手が届いていなかった。

 ダラ・ラナはWECのみならず、ロレックス・デイトナ24時間、モービル1セブリング12時間、リキモリ・バサースト12時間といった世界各地の耐久レースにも、さまざまなタイプのGT3マシンで参戦した経歴を持っている。

ノースウエストAMRの98号車アストンマーティン・バンテージAMR 2023年WECプロローグ

「アストンマーティンでレースをし、ル・マンに参戦し、世界選手権のタイトルを獲得したことは、私の人生における最大の冒険のひとつであり、残りの日々を大切なものにする、多くの思い出を与えてくれた」とダラ・ラナは引退に際し述べている。

「しかし、レースはいつかは止めなければならないものであり、私にとっては、その時がしばらく前から訪れていたんだ」

「競争するために最高のレベルで準備する充分な時間を見つけることは、ますます困難になってきている。 世界選手権タイトルに向け戦うためには、自分のすべてを捧げなくてはならない」

「私は規模が大きくなっていくWECのなかにいて、デイトナ、セブリング、ル・マンなどでV12、V8、そしてターボチャージャー搭載のV8バンテージをドライブすることができるようになった」

「それはとんでもない乗り物だったし、アストンマーティンでそのすべてを乗り切ることができたことに、とても感謝している。長年にわたり、私たちを見に来てくれた素晴らしいファンの皆さんに感謝したい。また、アストンマーティンの将来の幸運を祈っている」

ペドロ・ラミー、マティアス・ラウダとともに2017年のGTEアマのタイトルを獲得したポール・ダラ・ラナ(右)
2022年WEC開幕戦でクラス優勝したノースウエストAMRの(左から)ニッキー・ティーム、ポール・ダラ・ラナ、デビッド・ピタード

■悲願のWECデビューを飾るハート・オブ・レーシングチーム

 ノースウエストAMRの参戦枠を引き継ぐハート・オブ・レーシングチームは、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦しているチームであり、今週末のスパで初めてWECに参加することになる。

 チーム代表のイアン・ジェイムズが、98号車のアストンマーティン・バンテージAMRをアレックス・リベラス、ダニエル・マンチネリとシェアする。

 このチームは今年、WECへの参戦を申請したものの受理されなかったが、今回の一件により6月のル・マン24時間を含む今シーズンの残りの期間、WECに参加することが決定した。

 ただし、選手権の規定により『ノースウエストAMR』のバナーでの参戦となる。

「ハート・オブ・レーシングチームは、以前からル・マン24時間レースやWECに参戦する野望を持っていた」とジェームスは語っている。

「我々は野心的な集団であり、他のプログラムで幸運にも達成できた過去3年の実績に、WECを加えることは名誉なことだ」

「ロレックス・デイトナ24時間、ル・マン24時間のダブル制覇を目指すのは、とてもエキサイティングなことだ」

「この場を借りて、ポールの今後の活躍を祈るとともに、2023年の残りの期間、彼のエントリーを引き継ぐ機会を与えてくれたことに感謝したい。スパでは厳しい試練を受けることになるが、WECにおける98号車の成功の遺産を引き継いでいきたい」

2023年デイトナ24時間のGTDクラスを制したハート・オブ・レーシングチームの27号車アストンマーティン・バンテージGT3

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