新NISA、エコカー、国民健康保険…これから変わる税制を税理士が解説

4月から環境の変化があった方も多くいらっしゃるでしょうが、税金の制度もこれから色々と変更がある予定です。何が変わるか全くわからないですって? なんて…嘆かわしい!

毎年、税金の制度は必ず何か変わっていっています。今回の改正も、皆さんの身近な税制に変更がありますので、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなと一緒にしっかりと確認しておきましょう。


2024年から始まる「新NISA」

今回の目玉は「NISA」という投資制度に関する改正です。個人で投資をしている人にとって大きなメリットとなる内容で、2024年の1月から施行予定です。

まずNISAというのは、投資で儲けた所得に必ずかかる2割ちょっとの税金をゼロ円にしてくれる、という投資をする上でお得な制度です。NISAを活用できている方が1割ちょっとに対し、日本人の預金率は54%と言われています。自分の財産の半分以上の財産を預貯金に抱え込んで、利率が低くてほとんど増えないことも気にせずに「減らなくて安心♪」と喜んでいるなんて、なんて……嘆かわしい!

そんな日本国民がもっと投資で稼いでくれれば、国全体としてのお金も増える、という願いを込めての大改正です。

これまでのNISAは「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があって、1人につきどちらか片方しか使うことができませんでした。また、どちらも限度額があるだけでなく、非課税で運用できる期間も限りがありました。

例えば、一般NISAで30万円分の株を買うと、つみたてNISAは利用できず、一般NISAで買った30万円分の株で儲けた金額(運用益)が5年の間「非課税」、つまり税金がかからないということです。この非課税期間を過ぎると、そこから先の運用益には税金が課されるというルールになっていましたが、この点も大きく改正されます。

期間が無期限になって、保有の総額限度が設けられました。年間の投資金額も大幅に増え、これまでのNISA制度よりも、「ドバーッと、たくさん投資してくださいね」という気持ちが伝わってくる内容ですね。

インボイス制度がスタート

最近よく聞く「インボイス」とは、「適格請求書等」といわれていて、つまりは「ちゃんと消費税の税率やその税率ごとの税額が書かれた請求書や領収証」ということです。事業者さんで消費税の計算をする際に、きっちりとした金額で間違いなく計上できるようにするために始まる制度で、事前に「インボイスを発行します」と登録を受けた事業者だけが発行できます。

2023年10月からスタートするインボイス制度についても、新制度の運用をスムーズにするために、これまで決まっていた内容にプラスして次のような緩和策が登場しました。

・免税事業者からインボイス発行事業者になった方は、消費税の納税額を売上の2割に下げられる
・小規模な事業者なら1万円未満の取引はインボイスの保存は不要
・値引き分も1万円未満ならインボイス発行を免除
など

実際に運用が始まってみなければわからないと言われている事業者さんも多いですが、このような緩和策を活用して、新しい制度で戸惑う現場も無事制度を乗り切って欲しいです。

エコカー減税が延長に

自動車の購入時にかかる自動車重量税についても、見直しが決定しました。環境に配慮したエコカーについて税金を軽減させる「エコカー減税」は、制度の期限を延長することになりました。

・エコカー減税について、新型コロナウイルス感染症等を背景とした半導体不足等の状況を踏まえ、現行制度を2023年末まで据え置き
・2030年度燃費基準(以下2030基準)の達成度の下限を3年間で段階的に80%まで引き上げ
・3年目に制度の対象外となる2030基準75%~80%達成車について、1年間に限り本則税率の適用対象とする経過措置を設ける
・電気自動車等は、その普及を促す観点から、構造要件を維持した上で引き続き2回免税の対象とする

エコカーについては生産量が追いつかず、納車が先延ばしになっている方も多いようですね。その点にも配慮して、新車の購入時などにかかる自動車重量税について、令和5年4月末までの予定だった減税のルールを延長してくれるのです。エコカーとして要件を十分に満たしたものなら2回も免税してくれる、なんて……喜ばしい!

電気自動車の普及を狙って税金を安くするので、まだクルマを持っていない方も、これから買い替えようという方も、この税金が安いうちに買ってください、という意図が見えますね。

相続税・贈与税の見直し

改正されるなかには、「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築等」という、あまり聞き慣れない項目もあります。資産移転とは、相続や贈与といった親から子などに財産を渡すことで、生きているときに渡せば「贈与」、亡くなって渡ったら「相続」です。

この相続や贈与についても、令和6年1月1日以降の受け渡し分から、いくつかの改正が入っていて、そのうちのひとつに、こんなものがあります。

・暦年課税において贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間を相続開始前3年間から7年間に延長し、延長した4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算しない見直しを行う

今までは、生きているうちに渡した分のうち、亡くなる前の3年分は相続財産としてプラスされる、つまり3年分は贈与が無かったかのようにリセットされるというルールでした。今回の改正は、これを7年前までリセットするよ、というものです。何年もかけてコツコツと相続対策として贈与をされていた方にとっては、「なんて……嘆かわしい!」という改正です。

贈与税は、1年で110万円までは税金がかからず贈与ができるので、相続税対策として毎年110万円ずつを家族や親戚に贈与している、なんて話もよく聞きますが、そんな方に朗報です! 延長になった4年分に関しては、1年当たり贈与額から100万円を引いてから相続財産への足し込みしてくれるというものですので、110万円とまではいかないですが、100万円は引いてくれるということです。

かなり大きな相続財産があって、生前贈与で色々な対策を取ろうとしていた方にはダメージがありそうです。若くて元気なうちから、100万円ずつ子どもなどに贈与しておくというのは、相続対策として有効ですから、ぜひ検討して実践してみてください。

国民健康保険税の見直し

フリーランス・事業主の方の国民健康保険料についても、ほぼ毎年のように改正があるようです。収入の多い方については、限りなく高い保険料を払わなければならないというわけでなく、その支払う保険料に上限金額があります。どんなに収入が多くてもこれ以上は払わなくて良いということです。

その上限額は、1〜2年に1度は改正で2万円ほどずつ上がっているといいます。今回も、2万円の上限額引き上げがあります。逆に、収入が少ない方の軽減措置については、その軽減が受けられるという収入金額のボーダーラインを引き上げる改正があります。

(1)国民健康保険税の課税限度額を104万円(現行:102万円)に引き上げる。

(2)国民健康保険税の減額の対象となる所得基準について、次のとおりとする。

①5割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者等の数に乗ずべき金額を29万円(現行:28.5万円)に引き上げる。

②2割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者等の数に乗ずべき金額を53.5万円(現行:52万円)に引き上げる。

例えば、扶養している家族が2人いる場合、5割減税を受けるボーダーラインは所得金額100万円から101万円に上がったということです。少しではありますが、毎年の所得金額がボーダーラインギリギリだった方は、ちょっと安心できますね。

会社員の皆さんは、会社の協会健保に入られているので直接関係ありませんが、国民健康保険はフリーランスや事業主の皆さんにとっては重要な位置付けになります。物価の変動や世の中の流れに合わせて、毎年のようにこのような見直しがされていることを知ってください。


世の中がどうなればみんなが幸せになれるかを考えて、国の法律は日々変化しています。そのことを知っていただき、自分の税金の使われ方にも興味を持っていただきたいなと思います。

税がどう変わるかを分かった上で、自分の財テクに活かせれば、「なんて……喜ばしい!」ですね。

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