社説:特定技能の拡大 海外人材の「永住」に道

 海外の人材が日本で長く安定して働ける道を整えねばならない。

 熟練した技能を持つ外国人労働者に永住や家族帯同を認める在留資格「特定技能2号」の対象を2分野から11分野に広げる方針を、政府が示した。

 深刻な人手不足を背景に、海外からの労働者の受け入れは大きな転機を迎える。

 特定技能制度は、即戦力の外国人労働者に適用される仕組みだ。人材育成を掲げながら低賃金や人権侵害などが批判されてきた技能実習制度とは別に、2019年4月に創設された。

 12分野を対象に最長5年働ける1号と、熟練技能を要する2号があり、ともに試験などで技能水準を確認する。2号は配偶者と子どもの帯同が認められ、在留が継続10年以上といった条件を満たせば永住も可能だ。

 2号の対象は現在、建設と造船・舶用工業だけだが、新たに農業や漁業、宿泊など9分野を追加する。別資格で長期就労が可能な介護を含めれば1号の対象分野と重なり、技能実習や1号資格で来日した人も条件をクリアすれば無期限で働けるようになる。

 幅広い海外人材を明確に「労働力」と位置付け、「定住」の選択肢を用意して将来設計を描きやすくしたとも言える。

 日本の人口は、12年連続で減少している。持続可能な日本経済にとって、海外人材の受け入れ拡大は避けて通れない。労働力確保を訴える経済界の切実な声に押された形だ。

 ただ、「移民の受け入れだ」として保守層には慎重論が根強い。1号は2月末時点約14万6千人に上る一方、永住につながる2号はわずか10人にとどまっている。

 特定技能でも技能実習と同様に妊娠を機に退職を迫られたり、転職の手続きを放置されたりするなどのトラブルが指摘される。

 国際的な人材獲得競争の時代を迎えており、円安などで日本の魅力は薄れつつある。たとえ受け入れ分野を拡大しても、人材を確保できるかは見通せない。

 海外から日本を働き先に選んでもらうには、制度の透明性はもちろん、結婚や育児を含め安心して働き、暮らせる環境の整備や支援態勢が欠かせない。

 政府の有識者会議は今月、技能実習制度の廃止を提言した。「育成」の名目で制約する従来の枠組みを残すのではなく、労働者を生活者として扱う特定技能制度に一本化すべきだ。

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