実家じまいの費用、やり方は…福井の女性の経験談 売却や荷物処分に奔走「予想以上に大変」

3年ほど前から空き家になっている福井県福井市内の住宅。植栽が伸び雑草も生い茂っている

 住む人がいなくなった実家を整理して引き払う「実家じまい」。福井県内でも空き家は増えていて、相続したものの何から手をつけたらいいか悩んでいる人もいるだろう。「子どもに『負の遺産』は残すまい」と腰を上げた福井市の女性は、次々と課題に直面。結局、手放すまでに約4年、かかった費用は600万円を超えた。「予想以上に大変だった」と経験を語る。

▼負の遺産

 「無事に手放すことができてほっとした」。絵本作家の女性は2017年、空き家だった越前市内の実家を売却した。1人暮らしだった父親と朝比奈さんが同居するのを機に「実家じまい」を検討。「放置しておくのは物騒だし、近所にも迷惑がかかる。子どもに『負の遺産』を残したくない気持ちもあった」と話す。

 実家は築45年の鉄骨2階建てで、約120坪の土地に父親が建てたもの。売却か、賃貸に出したいと不動産屋に相談し、フリーペーパーなどに掲載されたという。複数の問い合わせ、内見はあったが条件面で折り合わず、そのまま3年ほどが経過した。

 その後、不動産屋の勧めで買い手がつきやすいよう建物を解体、更地にして売却することにした。ただ、ここで問題になったのが、家の中にあふれていた荷物だ。父親が買い集めた本が膨大にあり、女性1人で整理に取りかかるも途中で断念。業者に依頼し、最終的に他の家財道具を含め2トントラック5台分を処分した。費用は100万円を超え、続く建物の解体には300万円ほどかかったという。

▼さみしさより安心

 さらに、宅地として売りやすいよう2区画に分筆する測量費に約40万円。更地にした後すぐに買い手が付いたが、これまで固定資産税なども150万円以上納めており「売却してもお金はそれほど残らなかった」と苦笑いする。

 当時は業者による荷物の処分や、実家じまいといった言葉がメジャーでなかったこともあり「(不用品の処分を)どこに頼んでいいかも分からなかった」と女性。

 実家じまいを考え始めてから売却まで約4年、費やしたお金は600万円以上。女性自身も結婚するまで10年以上過ごした家だったが「実家がなくなるさみしさより、安心した気持ちのほうが大きかった」と振り返る。

▼20年で1.9倍

 国土交通省が2月に発表した実態調査によると、空き家所有者は5割以上が相続によって取得。▽物置として使用▽解体費用をかけたくない▽取り壊すと固定資産税が高くなる▽更地にしても使い道がない-などを理由に、手つかずのままになっている建物も多い。

 一方、空き家を放置すれば▽管理不足による倒壊▽犯罪者の占有▽雑草や動物の繁殖-などの懸念が生じる。女性の実家では空き家の期間中、泥棒と思われる侵入者により勝手口の窓ガラスが割られたり、室内にあった机の引き出しが壊されたりする被害があったという。

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 県内の空き家は増加の一途をたどる。県建築住宅課によると、2018年時点で空き家は約2万3800戸あり、20年で約1.9倍に増えた。全17市町の空き家情報が登録されている「ふくい空き家情報バンク」の登録数はここ5年は毎年200件を超え、2022年末時点で320戸となっている。

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