入院患者が抜け出し自殺 「医師らに注意義務違反」 京都大学に2800万円賠償命令

京都大学

 京都大医学部付属病院の精神科に入院していた男性=当時(43)=が病院を抜け出し自殺したのは、医師らが自殺防止のための措置を怠ったからだとして、男性の家族が京大に損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、京都地裁であった。池町知佐子裁判長は、当時男性に自殺の危険性あったことは予見可能で、病院に注意義務違反があったとして、京大に慰謝料など約2800万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は抱えていたうつ病が悪化し、2018年10月に同病院に医療保護入院。同11月5日、病院内で医師2人が同伴していた際に、男性は一人でトイレへ行き、無断で窓から抜け出し外へ出た。5日後、滋賀県の琵琶湖で男性の遺体が発見され、自殺と判断された。

 男性の家族は、男性は自殺を望むような発言を繰り返すなどしていたため、周囲の医師らは危険性を継続的に確認し、自殺防止する義務があったと訴えていた。一方、京大側は、当時の男性の様子から自殺リスクが高まっていたと評価することは困難だったと反論していた。

 判決で池町裁判長は、男性が入院初日にトイレの窓から外へ脱出していたことなどから、無断で病院を離れる可能性は想定できたと指摘。男性は入院後も不安定な状態が続き、突発的に自殺をするリスクがあったことなどから、医師らがトイレで目を離したことと自殺には因果関係があったと認定した。

 京都大医学部付属病院は「判決文が届いていないので、コメントは差し控える」としている。

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