部活動改革「誰もが夢を目指せるように」地域クラブ移行へ 模索続く掛川市【現場から、】

「部活動改革」で国は2022年、公立中学の休日の部活動を地域で運営するクラブ活動に段階的に移行する方針を示しました。静岡県掛川市は全国に先立ち、休日そして平日も含め「かけがわ地域クラブ」への完全移行を進めています。

<掛川美術クラブ 指導者 藤森美香さん>

「きょうは体験会にお越しいただきましてありがとうございます」

4月の第4週にスタートした「掛川美術クラブ」です。学校の部活動ではなく地域団体が運営する活動で、市内に住む小学5~6年生の児童と中学生あわせて13人が西中学校に集まりました。

掛川市は3年後の夏から、学校単位で行われている部活動を平日・休日共に「かけがわ地域クラブ」へと完全に移行する方向で改革を進めています。地域クラブ化には大きく2本の柱があります。教員の働き方の見直しと少子化による部員減少の対抗策です。「掛川美術クラブ」は地域クラブのモデルとして先行スタートしました。指導者は教員ではありません。

<藤森美香さん>

「普段は市内の会社に勤めております」

地域団体が募り、高校時代芸術を学んだ藤森さんが手を挙げました。

<藤森美香さん>

「それぞれの子のやりたい・挑戦したい気持ちを尊重して、できる範囲で背中を押してあげられたらなと」

地域の住民を指導者に迎えることで、教員の長時間労働の課題を解消します。

<参加している児童・生徒>

「将来の夢は漫画家になることです。トーンを貼るときの影を正確に描けるようにしたいです」

「ここでみんなと仲良くなることが目標です」

学校ごとではなく地域単位で生徒を募集し、人数を確保します。

<参加した生徒>

「東中は美術部がなくて。やっぱり絵がやりたくて」

<生徒の母親>

「学校内の部活でないものを他校の子どもたちとやっていくっていうのはチャンスが広がるし、経験が増えるのは子どもにとって良いことかなと思います」

<参加した生徒>

Q.入部する?

「楽しそうだからやってみたいなって、すごく思います」

<生徒の母親>

「送迎頑張ります!」

自分が通う中学校に取り組みたい部活動がなかった生徒にとって、特にうれしい制度です。ただ、改革はまだ走り始め。一筋縄にはいきません。

掛川市立東中学校陸上部です。部員は現在45人ほど。新1年生の入部も控えています。2022年度は掛川市内の中学生のうち、260人近い生徒が陸上部に所属。競技人口が多い陸上部の課題の1つが、指導者の充分な確保です。

<指導の様子>

「もうちょっと角度を意識しながら」

陸上部の顧問、篠崎光先生です。

<陸上部顧問 篠崎光先生>

「中学の先生になる時、今まで陸上に携わってきたので、ぜひ教えたいと思っていた」

<陸上部 部長 橋口咲空さん>

「同じ学校で生活している先生に教わることで楽しかったりする」

地域クラブに望むことは。

<陸上部 副部長 寺田涼華さん>

「自分が思っていることをちゃんと言えるとか、相手からも何か言ってもらえるような感じが良いです」

<顧問 篠崎光先生>

「誰もが夢を目指せる環境をつくっていくことがありがたいです」

子どもと大人それぞれの願いに応えるため、掛川市は4月24日、1回目となる「陸上競技検討部会」を開き、グラウンドの確保、そして指導者の確保などを話し合いました。

<掛川市陸上競技協会 桑原清会長>

「外部の(地域の)人間だけでなく(学校の)先生方にも協力していただいて、あるいは指導してもらって良い方向に向いていったら良い」

過渡期にあるこれまでの学校の部活動。生徒たちの心と体に一定の役目を果たしてきました。

<掛川市教育委員会 教育政策課 尾崎和宏課長>

「クラブ数は少なくなるかもしれませんが、できるだけ今(市内9つの中学に部活動として)あるものについては何とか(地域クラブ化して)選択の幅だけはつくれるように調整していきたい」

分野ごとの実情に見合った持続可能なスタイルにたどり着くため、現場では模索が続いています。

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