指定ごみ袋に記名、必要? 6市町必須、8市町任意 使用なく廃止の動きも 【あなた発 とちぎ特命取材班】

ごみ収集所に積まれた可燃ごみ。いずれも指定袋に氏名が書かれている=塩谷町芦場新田(画像は一部加工しています)

 進学や人事異動などで引っ越しが多い春。自治体への転入後、確認するルールの一つがごみ出しだ。県南に住んでいた頃、指定ごみ袋への記名を案内され、抵抗感を覚えたことがあった。ごみ袋への記名は県内でどの程度導入されているのか。下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」が27日までに可燃ごみについて調べたところ、県内25市町のうち18市町が指定のごみ袋を導入し、14市町で記名欄があることが判明。6市町は記名を求め、8市町は任意としていることが分かった。

 3月下旬の朝。塩谷町内のごみ収集所には、可燃ごみを入れた袋が20個ほど積まれていた。全てにペンで氏名が書かれている。

 管理する芦場新田自治会の井澤晴雄(いざわはるお)会長(69)は「記名は地域では当たり前」と話す。国道脇の収集所には通行人がごみを捨てることもあり、「指定袋と記名で地域住民がルール通りに出している証しにもなる」。

 同町は「ごみ出しに責任を持ってもらうため」とし、町民にごみ袋への記名を依頼。無記名の場合は回収しない方針をとる。ただ、衛生面などから無記名のごみ袋も置き去りにはせず、管理者を通じて住民に改善を促す。プライバシー保護の点で抵抗感を示す意見もあるが、排出者責任を説明して理解を求めている。

 可燃ごみに指定袋を導入する18市町のうち、益子や茂木町など6市町が記名を必須とする。栃木市によると、分別が不十分で回収されなかった場合に持ち主を確認する目的もある。

 同市、50代主婦は「県外から引っ越してきた時は驚いた」と明かす。ごみの中身を近隣に指摘され、複雑な思いをしたこともあったが「以前住んでいた自治体よりも収集所がきれいなのは住民がルールを守っているから」と今は納得する。

 野木町は可燃ごみに袋の指定はないが、生ごみの指定袋に記名を求めている。

 記名欄があっても、自治会に運用を任せるなど、記名を任意とするのは8市町。約30年前に指定袋を導入したさくら市の担当者は「当初は記名を求めたが、現在は名前を書く人はほとんどいない」と説明した。

 足利市は2021年度、ごみ袋のデザイン刷新時に記名欄を削除し、9言語で「燃やせるごみ」の表記を強調した。同様に欄をなくす動きもある。

 家庭ごみ分別リサイクルの国際比較研究を専門とする宇都宮大国際学部の高橋若菜(たかはしわかな)教授は「記名はごみ問題の責任と自覚を促すことなどを期待して全国で散見される」と説明。人目やモラルを重視する日本人の特徴に合う一方、「プライバシー侵害や犯罪につながる懸念があり、都市部では効果がない面もある」と話す。

 高橋教授は「各自治体は取り組みの狙いを明確化し、全体の合理性を考えた施策を講じる必要がある」と指摘している。

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