家を買うなら知っておきたい、販売会社が伝えない【住宅ローン控除】の注意点

人生で最も大きなお買い物とも言われるマイホーム。取得から修繕・リフォームと、まとまったお金が必要になる一方、安定した暮らしに欠かせないものであるため、国は住宅にまつわるさまざまな支援のしくみを設けています。

とりわけ住宅ローン控除はマイホームの取得時に利用でき、一定期間の家計負担を軽くできるため、注目されています。住宅ローン控除があってお得だから取得検討を始めた、という方も目立ちます。ところが2022年、住宅ローン控除には大きな変更が加えられました。2024年以降住宅を取得したいという方には、特に大きく影響しうる内容です。

今回は住宅ローン控除の基本を振り返りながら、新築住宅にまつわる住宅ローン控除の変更点を紹介します。


住宅ローン控除とは

住宅ローン控除は、要件を満たした住宅ローン契約者が、申請によって利用できる税金負担を減らすことができる仕組みです。「住宅ローン減税」とも呼ばれています。

住宅ローンは、原則ご自身で居住する住まいの取得に限定して利用できる借入金です。住宅ローン控除も必然に、マイホーム取得にあたって、一定の借り入れを利用する方が受けられます。

一方、住宅ローン控除は税額控除の一つです。税額控除とは、計算の結果出された納めるべき税金額から、ダイレクトに差し引ける金額です。そのため、税額控除の分だけご自身の納税額を減らすことができます。つまり、住宅ローン控除は住宅ローンを新しく組んだ方限定の、税金の割引サービスともいえるでしょう。

住宅ローン控除を利用するには、一定の要件を満たす必要があります。要件は以下のように、3つの種類に分けることができます。

(1)ひと
(2)住まい
(3)住宅ローン

それぞれにさまざまなチェック項目がありますが、2022年の改正では、主に(1)ひと、(2)住まいについて、要件の一部に変更がありました。その中から、新築住宅にまつわる変更内容をみていきましょう。

住宅ローン控除2022 年の改正内容(新築住宅)

控除率の縮小 1% → 0.7%

住宅ローン控除による減税額は借入残高に決まった控除率を掛け算して決定されます。2021年末まで適用された控除率は1%でしたが、2022年入居分から控除率は0.7%に下がりました。これにより、減税額は小さくなりました。

利用できる“ひと”の縮小

合計所得金額3,000万円以下 → 2,000万円以下

利用できる方の所得要件が厳しくなりました。2,000万円には、給与収入のみであれば給与所得だけ算入しますが、例えば上場株式等の配当所得や源泉徴収を選択した特定口座内の上場株式等の譲渡所得で申告したものがあれば、こちらもあわせて算入されます。

一部新築住宅の控除期間・限度額の縮小

これまでは新築住宅であれば、認定住宅を除き一律の住宅ローン残高限度額(4,000万円、認定住宅は5,000万円)と13年の控除期間が設けられていました。改正後は、主に省エネ性能によってカテゴリが細分化され、2022年以降2年ごとに残高限度額は徐々に減額していく予定です。

2024年以降、一部新築住宅では住宅ローン残高限度額は半分の2,000万円となり、控除期間も10年に短縮されます。ちなみに一部新築住宅とは、下記図で「一般」のカテゴリ表示をしたもので、断熱等性能等級4以上および一次エネルギー消費量等級4以上という省エネ基準を満たさないものを指しています。

画像:筆者作成

2024年以降改正で浮かび上がる新築住宅にまつわる不都合

2022年の改正で変更された新築住宅に関する住宅ローン控除の変更について、まとめると「2024年以降、新築住宅の取得に住宅ローン控除を有利に活用したい場合、高い省エネ基準を満たす住宅の取得が必要になる」ということです。

省エネ性能の高い住宅は、費用がかさむ傾向にあります。加えて供給側では、断熱性能等の数値計算や建築の技術も必要となります。そのため、「新築住宅にまつわる“要件の改悪”は知らせず、省エネ基準をあまり気にせず販売できる2023年中にできるだけ売ってしまいたい」と考えるハウスメーカーや工務店などが出てきても不思議はありません。

あるいは、ローコスト住宅など価格を抑えた住宅では省エネ基準は満たせず、2024年以降不利になることが増えるでしょうから、「あえて改悪を伝え、契約を急がせよう」とする営業手法が出てくるかもしれません。

これからは中古も視野に入れて計画的に臨もう

もちろん購入する側としては、安く買える方がいいでしょう。しかし、安さや目先のお得さばかりに注目していると、不利益を被る可能性もあります。

例えば、省エネ性能の低い住宅を取得する場合、確かに当初の価格は抑えられるかもしれませんが、賃貸物件から引っ越し後、実際に居住する中で光熱費が上がるご家庭は多いです。マイホームが一戸建てであれば、なおさらです。足元の電気・ガス料金の上昇を受け、地域によっては光熱費の支払いが“家賃並み”になるケースも見受けられます。

最近の金利上昇と重なり、住宅ローン控除率と住宅ローンの金利差で“利ザヤ”をとることは封じられつつあります。今でもとれるのは唯一、変動金利型くらいでしょう。利ザヤを取れる金利の低さを優先して変動金利型を選択すると、今後金利上昇が続いた後には、増額された返済が家計に重くのしかかることでしょう。返済期間が長いほどにそのリスクは高まります。

これからの住宅取得は、“大きなお買い物”という原点に立ち返りましょう。

ライフプランに基づき適切な予算を算出し、頭金を用意し借入額は最小限に抑えましょう。大きすぎる買い物は、往々にして後悔を招きます。とりあえず借りて余裕がある時繰り上げ返済すればいいと思っても、実際に実行できる方は多くありません。

実は今回の改正では、中古住宅に適用される要件がかなり緩和され、新築住宅同様の扱いに変更されています。中古住宅も視野に入れた適切な取得計画を立て、実行していきましょう。

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