お疲れさまでした

 東京支社勤務で長崎を離れていた筆者に「田上が補充立候補で出るよ」と電話で教えてくれたのは旧知の長崎市職員だった。その職員の方が年長だったから「タウエ」と呼び捨てだった▲最初は、え、としか言葉が出なかった。成算はあるんですか、有力な応援者はいるんですか、いないんだったら思いとどまるように説得した方がいい、だって、選挙に落ちて彼が市役所を辞めちゃうのは損失だ…。そんなことを思いつくままにしゃべった▲その後の選挙-。市長職が世襲で引き継がれることに疑義を唱え、「市民力」を掲げた田上富久さんは見事に初当選を果たした。「どっから票が出てきたのか分からん」…同僚の分析はあまり分析になっていなかった▲あれから4期。投票日の翌々日が任期満了の日で、田上さんは割と慌ただしい感じで市役所を去った。在任中はいろいろ書きましたがお疲れさまでした-と書くタイミングもなかった。少し遅くなりましたが▲ところで、自分の次の市長を決める選挙で、田上さんが応援のマイクを握ったのは〈分厚い組織力に支えられて〉戦う候補者だった。何にも悪いことではないけれど、あなたを支えたのはどんな票だったか覚えているだろうか、と少しだけ違和感が残った▲16年は長い時間なのだ、と改めて感じた。(智)

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