「人生のどん底」救ったキャンプ アウトドアショップ開業男性が語る魅力

湖南アルプスの間近に店を構え、「いずれはオリジナルのテントを作りたい」と意気込む野田さん(大津市桐生3丁目)

 野田健太さん(23)は「人々のストレスを緩和すること」をコンセプトに、元の職場の同僚だった山田洋輔さん(36)とともにキャンプ場や湖南アルプスが近い大津市桐生でアウトドアショップを昨年秋にオープンした。「人生のどん底」ともいえる体験をした中で、癒やしを与えてくれたのはキャンプだった。

 店名はGEAR(ギア・道具)とGIFT(ギフト・贈る)を組み合わせた「GEARFT(ギアフト)」とした。店内には、県内在住の作家が製作したテーブルやティッシュケース、Tシャツが並んでいる。ほかにも、焚き火台やチェアなどキャンプ道具を多様に取りそろえる。自分たちがかわいいと思った商品を全国から仕入れている。

 5年前から始めたキャンプは、以前は趣味で年に数回出かける程度だった。2年ほど前、プライベートでさまざまなトラブルに見舞われた。体重が15キロも落ちるストレスを感じる中、友人に誘われて行ったキャンプで「自然が包んでくれ、活力を得た」と魅力をあらためて認識した。

 接客や道具の説明は山田さんに任せ、来店者の話を聞くのが主な役割。オープンして間もなく、バイクで北海道1周をしようと道具を集めているという三重県鈴鹿市の50代男性が訪れた。仕事のトラブルでお酒に逃げていたがキャンプで癒やされて救われたことなど、1時間半にもわたって話を聴いた。「話すことでもストレス発散になれば」という思いからだ。

 店で持ち帰りコーヒーの販売を始めると、近所の人たちが気軽に訪れ始めた。ときには女性が数名集まって店内のテーブルにお菓子を広げて会話を始めた。一緒に会話の輪に入りながら「地元の人に喜んでもらえてハッピー」と、温かく迎えてくれた地域のとつながりに手応えを感じる。周囲には交通手段のない高齢者も多い。いずれはキッチンカーを呼ぶなどのイベントで地域に還元できたらと考える。「道具を売るだけの店とは違う『絆』を大切にしたい」。栗東市在住。

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