<社説>北部医療組合発足 人材と財源確保が急務だ

 本島北部の基幹病院となる公立沖縄北部医療センターの設置主体「北部医療組合」が発足した。県と北部12市町村が共同で運営する一部事務組合だ。医療センターは県立北部病院と北部地区医師会病院を統合して設立される。2028年開院を目指す。 医療組合は建設整備や完成後の管理運営の主体を担う。開院に向け基本設計を進めており、夏ごろに実施設計へ移行する。25年にも開発工事や本体工事に着手する予定だ。

 医療センターは地域住民のニーズを満たし、安心できる医療の提供を目指している。実現には医師や看護師ら医療従事者の確保が重要となる。そのためには財源の確保と運営の安定が求められる。医療組合の手腕が問われる。

 北部地域の医療充実は、地域住民に限らず、県民全体の願いである。医療センターの開院への期待は大きい。北部地域の医療は切迫した状況にありながら、基幹病院の構想策定に長い年月を要した。

 北部地区の医療構築が喫緊の課題となったきっかけは、05年にまでさかのぼる。北部病院の産婦人科が医師不足で休止に追い込まれたのだ。

 北部病院と北部地区医師会病院は急性疾患、重症患者の治療を24時間体制で対応する急性期医療を担ってきた。一方、両病院では多くの診療科が重複し、医師の分散が課題となっていた。医師1人当たりの負担は大きく医師不足を招いた。救急搬送や転院などを含め、北部地域の入院患者の20%超が中南部地域で医療を受けるという状況だった。

 事態を重く見た県は「北部地域における医療提供体制の確保に関する研究会」を設け、14年に両院統合を提言。17年3月には、基幹病院設置を求める住民総決起大会が開かれた。同年12月、県は病院設置方針を表明、19年1月に基本合意書案を示した。

 基幹病院整備で大きな論点になったのが経営主体の在り方だ。曲折を経て20年にようやく合意書を締結、今回、医療組合設立にこぎつけた。

 当初26年度だったセンター開院予定が28年度に遅れた。免震構造の採用や実施設計、土壌汚染調査にかかる期間の見直しのためだ。

 その間、新型コロナウイルス感染症が流行し、北部地域の首長や医療関係者が「医療崩壊」の声明を出す事態も起きた。高齢者施設でクラスター(感染者集団)が発生したり重症者が増えたりすれば、北部全体の医療に影響を及ぼしかねず、問題視された。

 北部地域では感染症の流行、周産期医療、がん治療など医療体制への不安は尽きない。今後は新型コロナウイルス感染症対策の緩和で観光客の増加が見込まれる。その受け皿としても医療体制の整備は急務だ。

 医療従事者の確保には給料などの待遇保証、労働負担軽減が必要だ。財源を含め、これらの課題解決を急いでほしい。28年開院は待ったなしだ。

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