詩人・木下和郎しのぶ 4年ぶりに教え子らが「石楠花忌」 諫早・小長井 人を愛する心 後世に

詩碑前で木下をしのぶ教え子ら=諫早市小長井町

 諫早市小長井町出身の詩人、木下和郎(1932~90年)をしのぶ「石楠花(しゃくなげ)忌」が29日、同町で営まれ、木下の中学校教諭時代の教え子ら約30人が献花や作品朗読などで思いをはせた。
 木下は詩集「斧の花」など優れた叙情詩を残した。市立小長井小そばには詩碑「昭和十九年秋」があり、「軍国少年」だった木下が同町沖に墜落した米軍機B29と若い飛行士の死を見詰めた詩が刻まれている。
 木下が愛した石楠花にちなんだ顕彰の集いは、詩碑建立や詩友だった島田勇さん=故人=が長崎新聞に生涯を記した「詩人木下和郎素描」を連載したことをきっかけに、かつての教え子や文学仲間らが1994年から開催。コロナ禍の中断で4年ぶりの再開となった。
 教え子らは詩碑前で木下に思いをはせた後、雨天のため近くの小長井文化ホールに会場を移して集いを開いた。木下と親交のあった伊東静雄研究会の上村紀元会長(83)は「豊かな自然に育まれた生活の中から生まれた作品がほとんど。(諫早出身の浪漫派詩人)伊東と作風が通じるところがあり、次代の創作活動に大きな影響を与えた」と述べた。「恩師 木下和郎を偲(しの)ぶ会」代表世話人の中溝章さん(81)は「人間味あふれ、人を愛した心が作品からも感じられる。先生が残した作品とともに、後世に伝えていきたい」と話した。

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