2023年、スーパーGT・GT300クラスを走るGT300規定の車両には、フロアとボディに関して新たな空力規定が導入された。
『スーパーGT公式ガイドブック2023』で詳解されているとおり、フロアではフラットボトムの面積が縮小され、フロントにキール形状のアイテムの設置が許可、リヤ側では傾斜プレート（ディフューザー）の立ち上がりポイントが前進するなど、基本的な空力性能は上がる方向の反面、これまで“グレーな領域”だったリヤホイールハウス底面内側のスペースが傾斜プレートとして規定されたため、その部分で“稼いでいた”車両にとってはマイナスともなりうる規定変更だ。
また、ボディ上面では『基本車両と同様の外観を維持する』方向の規定が盛り込まれ、“レーシングカーならではの空力追求”という面では、やや牙が抜かれてしまった感もある。
これら新規定を採用するかどうかは各チームの判断に委ねられたが、ボディ・フロアのいずれかが2022年規定のままで参戦する場合、2023年シーズン中のアップデートが許されないことになっている。
2021年王者、SUBARU BRZ R&D SPORTは、ボディ、フロアともにこの規定に合わせマシンを仕立て直してきた陣営のひとつ。彼らの場合は空力面だけでなく、昨年から取り組んできたECU（エンジン・コントロール・ユニット）、そしてホイールの面でもニューアイテムを投じ、ポテンシャルアップを図ってきた。
2022年はここ春の富士ラウンドでポールポジションを奪い、決勝でも3位表彰台を得ている井口卓人／山内英輝のコンビは、2023年のマシンのアップデートをどう感じているのだろうか。第2戦走行前日の富士スピードウェイで、現時点での手応えとレースウイークへの展望を聞いた。
■「リヤ寄り」になった空力
2023年仕様のマシンについて山内は、「とてもいいと思います」と好感触を口にする。BBSのホイールの仕様変更については、最初に乗ったときから「違いが体感できた」という。
「最初にテストしたのが（モビリティリゾート）もてぎだったのですが、変えた瞬間に一発も出たし、タテGがとくに良くなっていますね。ロングランに関しても、昨年のホイールよりアベレージは上がっています」
ただし、「剛性を上げてもらって、いい部分も出ていますが、低速（コーナー）では少し課題もありますね」と山内。
また、第1戦岡山が雨がらみのレースとなったことで、今季仕様のタイヤとホイールとのマッチングは、とくにロングランではまだきちんと確認できていない状態だ。「テストも雨が多く、ロングができていないのが不安要素」だという。
ECUの変更に関しては、「昨年トライしてダメだったのですが、今年にかけてはすごく熟成が進みました。いままでは、ホイールスピンしたときに車体が暴れるくらい動きが大きかったのですが、そこの空転の仕方がすごくコントロールしやすくなりました」と、扱いやすい車両特性となったようだ。
また、変更された空力規定への対応の部分に関しては、岡山の時点ではバランスを取りきれていなかったという。
「ちょっとリヤ寄りの傾向が強かったのでいろいろと（岡山のレースウイーク中に）トライはしたのですが、正直、まだ見つけられていない状態です」と山内は明かす。当然、第2戦に向けては考えられる対策は講じてきており、今季仕様のタイヤ＋ホイールの確認を含め、「早く（富士で）走って確かめたい」と山内も井口も走行開始を心待ちにしている。
「みんな富士のドライではちゃんと走れていないとは思いますが、自信はあります」という山内のコメントから察するに、ベースのポテンシャルアップは間違いなさそう。
第2戦富士でのライバルについて聞くと「AMG勢じゃないでしょうか。初音ミク（グッドスマイル 初音ミク AMG）も、レオン（LEON PYRAMID AMG）も速いと思います」と井口。
ちなみに開幕戦では珍しく山内がコースオフを喫する場面も見られたが、「一番の要素は、ブレーキング勝負に持ち込んだときに、濡れている路面に入ってしまい、ブレーキのコントロールの仕方を間違えてしまったこと」と山内。「こういうことがないように、気をつけたいです」と表情を引き締める。
果たしてBRZは、2023年のアップデートを活かし、開幕戦の悔しさを晴らすことができるのか。ドライのデータが少なく混戦が予想されるGT300クラスの、ひとつの注目ポイントとなりそうだ。
