人気再燃のラジオ、その背後にテレビあり!? ラジオに学ぶ「テレビのあり方」

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」のコーナーでは、“ラジオに学ぶテレビのあり方”をテーマに、Z世代とXY世代の論客が議論しました。

◆コロナ禍でラジオを楽しむZ世代が急増

近年叫ばれる"Z世代のテレビ離れ”。そんななか、ラジオが復権の兆しを見せています。コロナ禍の外出自粛の影響か、スマートフォンでラジオが聴けるサービス「radiko」の利用者が急増。Z世代の利用者も増えているそうです。

XY世代のキャスター・堀潤は「子どもの頃は(家に)ラジカセがあり、勉強しながら(ラジオを)聴いたり、(大人になってからは)車に乗ってラジオでナイター聴くのが当たり前だった」と懐かしそうに語ります。

元ニッポン放送のアナウンサーで現在もさまざまなラジオ番組に出演中のXY世代、フリーアナウンサーの荘口彰久さんは、ラジオについて「見つけてもらわないと聴かれないメディア」と表現。

コロナ禍では、テレビやインターネットでコロナに関することを目にすることが多く気が滅入ってしまいがちのなか、「スマホで『radiko』のアプリを見つけて、ラジオを聴いてみたら、そこにはコロナが全くないかのようなトークをしている人たちがいて、"こんな世界があるんだ”と、そこからハマった人も多かったと思う」と若者の気持ちを推察します。

実際、ラジオは今どのぐらい聴かれているのか。radikoの「プレミアム登録」の会員数の推移を見ると、2014年のエリアフリー聴取のサービス開始以降、右肩上がりでコロナ禍にあっても上昇中。15~19歳の利用者の半数以上は、2019年以降に利用開始しています。

普段、ラジオは聴かないというZ世代、Health for all.jp代表の茶山美鈴さんは、「キーワードは"世界観”なのかなと思った」と率直な印象を語ります。

メディアでは、日々、悲しいニュースや暗いニュースが溢れるなか、「ラジオでは違う人だったり、違うコンテンツが聴ける。その世界観の差異がラジオの魅力を生み出しているのではないか。CDや音楽を聴くのも同じような感覚なのかなと思う」と語る一方で「ラジオの盛り上がりはテレビの状況ありき。テレビのありようを変えたら、ラジオの盛り上がりも変わりそう」とも。

荘口さんは「東日本大震災のときもテレビやネットでは心が痛むような映像が流れるなかで、ラジオから流れてきた『アンパンマンのマーチ』が人の心を癒したという事例もある」と前置き、「ラジオは、ひとつの避難場所」と主張。この日の主題として"キー局の片隅で、テレビの未来を考える!”と掲げます。

◆ラジオはとにかく温かい!? その理由とは?

堀が考える昨今のラジオのイメージは「LIVE・温かい」。「Voicy(ボイシ―)」など、さまざまな音声メディア・音声プラットフォームが生まれるなか、「やはりラジオはインタラクティブ性が高く、しかもラジオに出る人はみんなラジオが好きな方ばかりだから、温かみを感じる。ずっと怒っているラジオ番組はない」と印象を述べ、荘口さんのいう"避難場所”という例えに納得。

ラジオはあまり聴かないというZ世代、株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは「"ながら”で聴く文化が広がっているのは感じる」と実感を述べつつ、私的な意見として「若者はYouTubeやTikTokに流れ、テレビは上の世代に寄せている気がする」とコメント。一方、ラジオについては「10代に人気のタレントやクリエイターを起用し、若者向けに番組を作っている印象が強い。そこは重要なヒントかもしれない」と語ります。

この意見に、荘口さんは「いわゆるこれから売れていこうとしている方々がたっぷり話をすることができるのがラジオ」とその魅力について触れ、テレビとラジオの違いについては「テレビは映像を観ていないと何をしているかわからなかったりするが、ラジオは聴いているだけでわかるというのは、(ながら)仕事などにも向いている」と指摘。

ここで堀からは、「Podcast(ポッドキャスト)」をはじめとする音声メディアとラジオの違いについての疑問が。すると、面白かったポッドキャストを決める「JAPAN PODCAST AWARDS」に携わる荘口さんは「ポッドキャストで人気があるのは、ラジオのようにゆるい話をしているものじゃないんです。歴史や科学的な話をしてるけど、なぜか面白いとか、ポッドキャストは何かを学びたくて聴いている人が多い。そこは棲み分けができている。そこが面白い。音声メディアはすごくニッチ」と説明します。

◆テレビにはない、ラジオならではの"共犯関係”

若者がラジオを聴く理由を街頭で聞いてみると「テレビはずっと観ていないといけないが、ラジオは歩きながらでも聴ける」(21歳 学生)、「ラジオの魅力は、その人の素が見えるところ」(17歳 高校生)、「ラジオは雰囲気も大事で、その雰囲気も好き」(19歳 学生)といった意見がありました。

また、Z世代への映像視聴に関するアンケートでは、「ながら見」をしているという回答が81.3%。そして、ラジオの魅力について聞いてみると、10代・20代ともに「ラジオならではの一面がみられる」という声が最も多かったということです。

荘口さんは、「アイドルがテレビで『仕事をやりたくない』と言ったら大騒ぎになるが、ラジオで『もう疲れた』、『やりたくない』(と本音を漏らすの)はOK。そこにあるのは、リスナーとしゃべり手の"共犯関係”。ラジオでは本音を言うから他の人には言わないでという暗黙の了解がある」と解説。

好きなアーティストが出演している番組など、普段からラジオをよく聴いているというZ世代のキャスター・田中陽南は「(ラジオでは)しゃべる側も聴く側もコミュニティができていて、居場所のようなものを感じる。毎週聴いていると、先週やったことを説明しない。みんな知っている体で話す安心感もある」とラジオの魅力を語ります。

荘口さんも「まさにそう!」と納得。リスナーが知っている体で番組が進むことに加え、「番組のなかだけで使える挨拶や言葉などもあり、聴いていない人からすると気持ち悪いかもしれないが、そうしたこともまた共犯関係」と補足します。

茶山さんは、前述の調査結果を引き合いに、ラジオとテレビの違いについて持論を展開します。まずラジオは出演者に依存しており、そこに吸い寄せられる人がいるが、逆にテレビはコンテンツ依存。番組制作陣の意図に沿った出演者が複数人いるため一人ひとりフォーカスされるわけでなく、個々人をより楽しむならラジオが適していると茶山さん。

その流れを踏まえた上で「テレビとラジオは乖離して考えるものではない」、「テレビがある上で今のラジオの盛り上がりがあり、"ラジオならではの一面”というのもテレビありき。テレビがなくなれば"ならでは”はなくなる」と指摘します。

◆今のテレビに必要なのは、深いコンテンツの強化!?

今のテレビに落とし込めるラジオの良さを荘口さんに聞いてみると、「テレビはみんな本音を言っていないと思われているので、そこから変えていかないとどうしようもない。YouTubeは本当のことを言っていると思っている人が大勢いる」と自身の考えを述べます。

茶山さんは「視聴者を増やしたいという意味合いで(テレビのありようを)変えていいのか」と疑問視。視聴者との距離感や信頼性を高めるための変更は必要としつつ「若者層を獲得していくのは難しいと思うので、今あるパイのなかでその人たちをいかに満足させていくかという方向にテレビもシフトしていかないと。例えば、視聴者と相互の交流があったり、何かで距離感を縮めていくほうがいいのかなと思う」と提案します。

堀は、荘口さんが説明していたポッドキャストとラジオの違いから、コミュニティ感の重要性を改めて感じたと言い、「だからこそテレビがやるべきは"専門性”の特化」と主張。1回の放送で数十万、数百万もの家庭に届く電波でみんなが好き勝手言えるかというと、それはやはり難しく「自制してしまうところもある」と堀。「だからこそ学びになること、知らなかったこと、専門家がちゃんと話す、そうした空気を作るのがテレビの道」と力説します。

最後に、Z議会からの提言を代表して、小幡さんが発表。今回の議論を受け、テレビは今後どうなっていくべきか。それは「マスだけじゃない深いコンテンツ」「アニメやドラマなど目と耳で楽しむ作品の強化」のふたつ。

これに対し、荘口さんは、アニメやドラマについては、すでにさまざまな配信サービスで楽しめることから、後者よりも前者の重要性に関心を示します。そして、ラジオの深いコンテンツづくりの秘訣については「それは本当に自由にやらせるだけ。好きなことをしゃべってくださいという空気」と荘口さん。

番組Twitterの「スペース機能」に参加していた視聴者からは「ラジオはいけないものをのぞいているような気持ちにさせる。私も過去には布団に潜ってラジオを聴いていた。そういう背徳感が魅力」と言い、対してテレビはというと「ラジオにはないビジュアルから入る魅力がある。例えば、漫才やバラエティはビジュアルから入ってきて相乗効果があって笑いを呼ぶところもある」と双方の強みについて言及。

これに堀は「確かに。タブーの深淵をのぞくというのは、今は世の中漂白されて真っ白になってしまっているから、そういう場所での居場所にも、価値がある」と大きく頷いていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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